口腔機能

[P一般-023] 地域在住高齢者におけるオーラルフレイル，社会的フレイルと身体的フレイルの関係

○弘中 早苗^1,2、釘宮 嘉浩^2,3、渡邊 裕^2,4、本川 佳子²、平野 浩彦²、大渕 修一²、柿木 保明¹ (1. 九州歯科大学　老年障害者歯科学分野、2. 東京都健康長寿医療センター研究所、3. 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座、4. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】
オーラルフレイル（Oral frailty，OF）は複数の口腔機能が低下した状態を示す概念であり，身体的フレイル（Physical frailty，PF）や要介護状態の予測因子であることが明らかにされている。つまりフレイル対策や介護予防においてはOFの関連因子を明らかにしてOFの対応方法を確立することが重要である。また，社会性が複合的に低下した状態である社会的フレイル（Social frailty，SF）と要介護との関連についても報告がある。ともに要介護状態に関連するOFとSFには密接な関係があると考えられるが，その関係については明らかになっていない。OFの関連因子および両者の関係性が明らかとなれば、多面的な概念であるフレイルへの効果的な対応へつながる。本研究の目的は，OFの関連因子の検討，特にOF，SF，PFの関係性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
本研究では，来場型包括健診に参加した65歳以上の地域在住高齢者682名（平均年齢73.3±6.6歳，男性267名，女性415名）を対象とした。口腔機能，社会性，身体機能，栄養状態，認知心理的機能，既往歴，服薬状況について調査を行った。OFの関連因子を検討するために順序ロジスティック回帰分析を行った。さらにOF，SF，PFの関係性を推考するためにパス解析を行った。
【結果と考察】
OF該当者は65名（9.5%）であった。順序ロジスティック回帰分析の結果，年齢，栄養状態の低下，脳血管疾患の既往，多剤服用，社会性の低下，身体機能低下がOFと有意に関連していた。パス解析の結果，SFはOFへ直接的に関連しており，OFとSFはそれぞれPFへ直接的に関連していた。また，OFからSFへは栄養状態の低下を介して間接的に関連していた。OFが身体機能低下だけではなく社会性や栄養状態といった全身的な健康状態の低下と関連したことから，健康維持のためにOFを早期に発見し，多面的に対応することの重要性が示唆された。また，OFとPFの背景にSFの存在がある可能性が示された。今後，OFへ対応する際は，社会性についても考慮し，対応する必要があると考えられた。本研究で得られた知見はOFへの適切な対応方法を確立するための重要な根拠の一つになるものと思われる。
(COI開示：なし)(東京都健康長寿医療センター倫理委員会 承認番号2018-16）