[P一般-024] 地域在住高齢者における口唇閉鎖力の横断調査
【目的】
口唇は,表情の発現や発音および摂食嚥下に重要な役割を果たす。本研究では,地域在住高齢者に対して口唇閉鎖力の横断調査を行ったので報告する。
【方法】
対象者は,2019年6月に京都先端科学大学にて実施された体力測定会に参加した高齢者336名(男性68名,女性268名,平均年齢76.0±5.3歳)とした。口唇閉鎖力の測定は,りっぷるくん®(松風,京都)を用い,Body mass index(BMI),握力,最大舌圧,オーラルディアドコキネシス(/pa/,/ta/,/ka/)とともに調査した。各項目間の相関関係はピアソンの積率相関係数を用いて検討した。また,前期高齢者群と後期高齢者群の比較で加齢による影響を検討し,BMI < 18.5を低栄養群として栄養状態との関連を検討した。平均値の比較にはスチューデントのt検定を用い,有意水準は5 %とした。
【結果と考察】
口唇閉鎖力(平均値±標準偏差)は,男性が12.8±4.7 N,女性が12.0±3.6 Nであり,男女ともに握力および最大舌圧との間に弱い正の相関を示した(男性:握力r = 0.39,最大舌圧r = 0.29,女性:握力r = 0.17,最大舌圧r = 0.23)が,オーラルディアドコキネシスとは相関を認めなかった。前期高齢者群と後期高齢者群の比較では,男性は有意差を認めた一方で(前期高齢者群16.9±5.3 N,後期高齢者群11.9±4.1 N),女性は有意差を認めなかった(前期高齢者群12.0±3.3 N,後期高齢者群11.9±3.9 N)。また,健常群と低栄養群の比較では,男性は有意差を認めた一方で(健常群13.1±4.6 N,低栄養群8.4±3.5 N),女性は有意差を認めなかった(健常群11.9±3.6 N,低栄養群12.0±3.6 N)。以上の結果より,口唇閉鎖力は,握力や最大舌圧などの筋力の指標とは関連が認められるものの,オーラルディアドコキネシスとは異なる口唇の運動機能を評価しており,口腔機能検査としての有用性が確認された。また,口唇閉鎖力の加齢変化は男女間で異なり,栄養状態との関連も一部示されたことで,今後,オーラルフレイルの予防および診断の一助となることが期待される。
(広島大学 倫理審査委員会承認番号 E-1461号)
口唇は,表情の発現や発音および摂食嚥下に重要な役割を果たす。本研究では,地域在住高齢者に対して口唇閉鎖力の横断調査を行ったので報告する。
【方法】
対象者は,2019年6月に京都先端科学大学にて実施された体力測定会に参加した高齢者336名(男性68名,女性268名,平均年齢76.0±5.3歳)とした。口唇閉鎖力の測定は,りっぷるくん®(松風,京都)を用い,Body mass index(BMI),握力,最大舌圧,オーラルディアドコキネシス(/pa/,/ta/,/ka/)とともに調査した。各項目間の相関関係はピアソンの積率相関係数を用いて検討した。また,前期高齢者群と後期高齢者群の比較で加齢による影響を検討し,BMI < 18.5を低栄養群として栄養状態との関連を検討した。平均値の比較にはスチューデントのt検定を用い,有意水準は5 %とした。
【結果と考察】
口唇閉鎖力(平均値±標準偏差)は,男性が12.8±4.7 N,女性が12.0±3.6 Nであり,男女ともに握力および最大舌圧との間に弱い正の相関を示した(男性:握力r = 0.39,最大舌圧r = 0.29,女性:握力r = 0.17,最大舌圧r = 0.23)が,オーラルディアドコキネシスとは相関を認めなかった。前期高齢者群と後期高齢者群の比較では,男性は有意差を認めた一方で(前期高齢者群16.9±5.3 N,後期高齢者群11.9±4.1 N),女性は有意差を認めなかった(前期高齢者群12.0±3.3 N,後期高齢者群11.9±3.9 N)。また,健常群と低栄養群の比較では,男性は有意差を認めた一方で(健常群13.1±4.6 N,低栄養群8.4±3.5 N),女性は有意差を認めなかった(健常群11.9±3.6 N,低栄養群12.0±3.6 N)。以上の結果より,口唇閉鎖力は,握力や最大舌圧などの筋力の指標とは関連が認められるものの,オーラルディアドコキネシスとは異なる口唇の運動機能を評価しており,口腔機能検査としての有用性が確認された。また,口唇閉鎖力の加齢変化は男女間で異なり,栄養状態との関連も一部示されたことで,今後,オーラルフレイルの予防および診断の一助となることが期待される。
(広島大学 倫理審査委員会承認番号 E-1461号)