一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

講演情報

一般演題(ポスター)

PDFポスター

連携医療・地域医療

[P一般-045] 高齢悪性脳腫瘍患者に対する周術期口腔機能管理の効果

○小谷 朋子1、中川 量晴1、尾﨑 研一郎1,2、奥村 拓真1、吉澤 彰1、久保田 一政1、古屋 純一3、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野、2. 足利赤十字病院 リハビリテーション科、3. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野)

【目的】
近年,入院患者の口腔由来の合併症を予防するために,医科歯科連携の重要性が認識され,「周術期口腔機能管理」が保険収載された。しかしながら,悪性脳腫瘍(Malignant Brain Tumor: MBT)に対する周術期における歯科口腔管理の効果についての報告はない。MBT患者は嚥下障害や低栄養が出現する場合もあるため、誤嚥性肺炎予防や栄養療法も考慮した周術期における歯科口腔管理は重要と思われる。本研究は,入院中のMBT患者を対象に,医科歯科連携した口腔管理が口腔問題,嚥下機能,栄養等に影響するか明らかにすることを目的とした。

【方法】
当大学医学部附属病院脳神経外科に入院中のMBT患者を対象とした。評価項目は、年齢、性別などの基本情報,意識レベル,日本版modified Rankin Scale(mRS),口腔の状態(Oral Health Assessment Tool: OHAT),摂食嚥下機能(Dysphagia Severity Scale【DSS】、Functional oral intake scale【FOIS】)および栄養に関する項目(BMI,アルブミン値,栄養投与方法)とし,初回と歯科口腔管理終了時で比較した


【結果と考察】
対象者は7名(男1名,女6名,年齢中央値69歳)であった。OHATスコアは,7項目および合計点が管理後に低値を示し,歯科口腔管理により口腔問題が改善した。特に義歯の調整・修理による義歯関連スコアが改善し,一部の対象者で食形態の向上につながっていた。初回DSS1-4が4名、5-7が3名であり、管理後に改善したものは1名であった。また、FOIS1-3が4名、4-7が3名であり、管理後に改善したものは同様に1名であった。BMIとアルブミン値は,不変か低下したものが多かった。摂食嚥下機能は,今回の検討では十分な改善を得ることができなかった。栄養状態の項目(BMI,アルブミン値)は,浮腫による体重増加や炎症によるアルブミンの消耗などを考慮する必要があった。以上より,MBT患者に対して,周術期口腔機能管理を実施したところ,口腔問題が改善する可能性がある。一方,摂食嚥下機能や栄養状態,栄養摂取方法はほぼ不変であり,今後は症例を増やし、MBT患者に対する周術期口腔管理の効果を明らかにしたい。

承認番号:D2015-503  COI 開示:なし