一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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一般演題(ポスター)

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連携医療・地域医療

[P一般-046] 病院と地域歯科診療所の協働により,シームレスな食支援を行った一症例

○佐藤 美紀1、渡邉 宏春1、米山 武義2 (1. さくらばし歯科医院、2. 米山歯科クリニック)

【目的】
 地域包括ケアシステムの構築が推進される中,在宅医療を支える専門職の一員として,歯科衛生士が果たすべき役割は重要である。地域の歯科診療所においては,通院可能であった患者が入院し,介護が必要となって通院困難になった場合,病院や在宅へ訪問することにより,切れ目のないケアを行うことが求められている。今回,入院から退院,在宅療養へと,円滑に食支援の移行ができた症例を報告する。
【症例の概要と処置】
 84歳,女性。歯科外来診療が中断していたため,夫に連絡をとったところ,2018年11月,脳梗塞発症により入院していることが判明。夫からの依頼あり,2019年1月,入院先の病院(回復期リハビリ病棟)への歯科訪問診療が開始された。右上下肢麻痺,失語症が残存。食形態は,全粥できざみ食,水分はトロミ付。上顎総義歯と下顎部分床義歯は未使用。不適合となった義歯を修理,上下義歯装着として,医科歯科の多職種協働で食事等の観察をしていった。訪問当初,自力摂取により一口量は多く,咀嚼が不十分で送り込みがされていない状態にもかかわらず,次の一口を摂取する行動を認めた。窒息の危険がある状況が見過ごされていると判断,訪問歯科衛生士が言語聴覚士に食事介助方法の指導を行い,咀嚼を伴う嚥下が可能となり食形態の引き上げにつなげた。理学療法士とは退院後の在宅生活をイメージできたことで,適正な食事姿勢がとれる環境を整えていった。さらに,患者家族も含め,病院医療チームと情報共有したことで,在宅復帰支援に向けての準備がスムーズかつ安心して行えた。
【結果と考察】
 2019年4月,退院時の食形態は,常食で一口大,水分はトロミなし。早期から病院医療職と連携をした結果,2回にわたるカンファレンス(退院支援カンファレンス,退院前カンファレンス)に参加する機会を得た。
 今回の経験から,患者のおかれた環境,状況を勘案し,地域歯科診療所から病院へ訪問することの重要性が示唆された。それには,生活を支える視点へのシフトが必要であり,大切なのは,どこまでもその人のためにかかわっていこうとする医療職としての責任と思いである。そして,日頃からの医療と介護の交流,相互理解をした上で,地域の現状に合わせた柔軟な対応が求められると考える。(COI開示:なし)