[P一般-058] 要介護高齢者における喉頭侵入に関連する要因の検討
【目的】要介護高齢者は摂食嚥下障害がみられることが多い。我々は要介護高齢者の摂食嚥下障害を嚥下内視鏡検査(VE)で調査したところ,咽頭期障害では咽頭部残留が多いとの結論を得た(第60回奥羽大学歯学会)。咽頭部残留の状態が改善されないと,喉頭侵入から嚥下後誤嚥へ移行する可能性がある。本研究は要介護高齢者において,喉頭侵入に関連する要因を検討したので報告する。【方法】対象は,介護老人保健施設に入所しており,VEを実施した261名(男性96名,女性165名,平均年齢86.3±6.5歳)から選択した。喉頭侵入群はVE中に喉頭侵入がみられた33名とし,コントロール群はVEで問題がみられなかった66名とした。年齢,性別,要介護度,脳血管障害の有無,認知症の有無,顎堤粘膜での咀嚼の有無,食形態および水分のとろみ(日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013)について統計学的に比較した。【結果と考察】年齢は,喉頭侵入群が平均80.4±7.2歳,コントロール群が平均87.2±6.8歳で有意差を認めた(p=0.033)。性別は,喉頭侵入群が男性15名と女性18名(男性率45.5%),コントロール群が男性15名と女性51名(男性率22.7%)で有意差を認めた(p=0.037)。水分のとろみは中間のとろみ以上の比較で,喉頭侵入群が33名中14名(42.4%),コントロール群が66名中14名(21.2%)で有意差を認めた(p=0.048)。今回の結果では,喉頭侵入群の年齢のほうが,コントロール群よりも低かった。これは,80歳代後半になってくると,声門上の位置に食塊をとどめられず,誤嚥の所見を認めてしまうためと考える。また,性別では男性で喉頭侵入となる割合が多く,加齢に伴う喉頭下垂が男性で大きいことが影響しているものと考える。水分のとろみに関しては,喉頭侵入群が中間のとろみ以上で有意差を認めた。薄いとろみ以下では喉頭にとどまらず,気管に入り込んで誤嚥となってしまうため,有意差がみられなかったものと考える。結論として,要介護高齢者で喉頭侵入に関連する因子は,年齢,性別(男性),中間以上のとろみであった。
(COI開示:なし),(奥羽大学倫理審査委員会承認番号第197号)
(COI開示:なし),(奥羽大学倫理審査委員会承認番号第197号)