The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

PDFポスター

実態調査

[P一般-060] 要介護高齢者の嗅覚機能と食欲に関する調査報告―臭気の種類と食欲の関連についてー

○金子 信子1,2、野原 幹司3、有川 英里3、山口 高秀2、光山 誠4、阪井 丘芳3 (1. 学校法人平成医療学園 なにわ歯科衛生専門学校、2. 医療法人おひさま会 やまぐちクリニック、3. 大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室、4. 医療法人敬英会)

【緒言】

  我々は低栄養に陥りやすい要介護高齢者の低栄養予防を目的として,嗅覚と食欲の関連について調査している.これまでの研究において,要介護高齢者の嗅覚は非要介護高齢者と比較して低下しているものの食欲や食事摂取量と関連しないことを報告した.しかしながら研究に用いた嗅覚検査は12種類の臭気を何のにおいなのかを同定する総合的評価であり,臭気の種類と食欲との関連については明らかではない.そこで今回は12種類の臭気を生活臭・植物臭・食品臭の3群に分け,要介護高齢者と非要介護高齢者で食欲との関連を検討した.

【方法】

 対象者は要介護高齢者73名(85.4±5.9歳),非要介護高齢者44名(81.2±6.3歳)とした.調査項目は認知機能HDS-R,食欲検査CNAQ,嗅覚検査OSIT-Jとした.検討項目は12臭気を「日本の日常生活臭の分類」から生活臭(墨汁,香水,家庭用ガス,汗臭い)・植物臭(バラ,ひのき,メントール,木材)・食品臭(みかん,カレー,練乳,炒めニンニク)に分け,目的変数をCNAQ,説明変数を臭気3群の正当率として要介護高齢者および非要介護高齢者それぞれ重回帰分析を行った.

【結果】

 HDS-Rは要介護高齢者19.3±4.7点,非要介護高齢者24.8±5.0点となり,非要介護高齢者の方が有意に認知機能は維持されていた(p<0.001).3群の正答率は生活臭・植物臭・食品臭の順に要介護高齢者は32.3%・28.5%・32.8%,非要介護高齢者は52.7%・56.1%・56.8%だった.重回帰分析の結果,要介護高齢者は食欲と3群の臭気では関連を認めなかったものの,非要介護高齢者においては食欲と植物臭の群との間で関連を認めた(重相関係数0.29).

【考察】

要介護高齢者は非要介護高齢者に比べて認知機能が低下し,さらに植物のにおいと食欲との関連は認められないことが示唆された.しかしながら本研究の臭気の中には植物が食品になるもの例えばみかん,炒めニンニクといったものあるため,カテゴリ分けによって異なる可能性があると思われた.

開示すべくCOIはなし,倫理は大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査委員会(承認番号:H29‐E24-1)である.