一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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実態調査

[P一般-065] 大都市に暮らす高齢者の口腔の健康:来場型健診参加者と訪問調査参加者の比較から

○枝広 あや子1、宇良 千秋1、白部 麻樹1、本川 佳子1、本橋 佳子1、渡邊 裕2、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】認知症有病率調査を兼ねた大都市に暮らす高齢者の生活実態調査である「高島平study 2016」より、会場調査および訪問調査参加者の主観症状の比較を行い発表する.

【方法】東京都特定地区在住の70歳以上高齢者7,614名中,一次調査(郵送留置き回収・自記式)の回答者5,432名に案内状を送り,参加同意した2,053名(会場1,360名,訪問693名)に二次会場調査を実施した.書面同意を得て問診, DASC-21,特定の訓練を受けた看護職または心理士によるMMSE-Jおよび運動・口腔機能の実測調査を実施した.二次会場調査に不参加のものには改めて訪問調査を依頼し、看護師が自宅を訪問し、問診、DASC-21,MMSE-Jのみを行った.両群のMMSE-J得点の分布は,23点以下は会場群9.6%,訪問群30.7%で約3倍の差を確認しており、MMSE-J得点を23点以下(M低下層),24-26点(Mリスク層),27-30点(M健常層)に層別化して検討することした.一次調査の内容から①基本チェックリストによるフレイル評価、②自己申告した体重を用いたMNA-SF、③主観的な口腔内の状況を用いて,層ごとに両群を比較した.

【結果】MMSE-Jの有効回答者2,020名(会場1,352名,訪問668名)を対象に,各層で群間差を検討した(連続変数はt検定,名義変数はχ2検定). ①全層ともに有意に訪問群においてフレイル該当者が40%以上多く(P=0.001,<0.001、0.016)、②MNA-SFの低栄養リスク該当者においても同様であった。③M低下層でより訪問群に主観的口腔健康観の低下を自覚しているものが多かった(P=0.006).洗口困難を感じるものはM低下層およびMリスク層で訪問群が40%以上多く(P=0.001,<0.001)、全層において訪問群に一年以内の歯科受診をしていないものが有意に多かった(P<0.001,0.015,0.008).

【結論】会場調査に出向く高齢者に比べ,出向かない高齢者の口腔機能低下が疑われ,外出を阻む疾患や移動能力の低下、フレイル、低栄養も含め生活困難がより重層的に生じている可能性が示唆された.地域介入の優先度を考える上で重要な資料と思われる.(COI開示:なし)

(東京都健康長寿医療センター研究所倫理委員会承認番号 28健経第2559号-33)