The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

PDFポスター

実態調査

[P一般-070] 地域在住高齢者の口腔機能低下の実態調査~パーセンタイル曲線による描出~

○五十嵐 憲太郎1,2、小原 由紀2、星野 大地3、釘宮 嘉浩2,4、白部 麻樹2、本川 佳子2、枝広 あや子2、飯塚 晃司1、伊藤 誠康1、大渕 修一2、渡邊 裕2,5、平野 浩彦2、河相 安彦1 (1. 日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴学講座、2. 東京都健康長寿医療センター研究所、3. 昭和大学歯学部 スペシャルニーズ口腔医学講座 地域連携歯科学部門、4. 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座、5. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室 )

【目的】

オーラルフレイルの概念が提唱され,口腔機能低下症が保険収載されるなど,口腔機能を評価し対応することの重要性が増している。口腔機能低下症は下位症状の評価項目ごとに基準値を提示しているが,現状では性別や年齢によらず単一の基準値となっている。これまでの口腔機能に関する研究は平均値などの単一の代表値による報告が多い。そのため,性差や加齢による機能低下を考慮した基準値を検討し,口腔機能評価・管理に活用する必要があると考えた。 本研究は,小児の身体的成長の評価等に用いられるパーセンタイル曲線を応用し,性別・年齢による口腔機能をパーセンタイル曲線として描出することで,その変化を可視化することを目的とした。

【方法】

東京都板橋区および群馬県吾妻郡草津町に在住する65歳以上の高齢者を対象とした包括的健康診査に参加した男女1448名のうち,各年齢階層が十分存在する65-85歳の合計1364名(男性553名,女性811名,平均73.6±5.7歳)を対象とした。口腔機能の評価として口腔水分量,咬合力,現在歯数,オーラルディアドコキネシス(ODK)/ta/,舌圧,咀嚼能力(混合および咬断能力)を行った。男女ごとの各評価の20,40,50,60,80パーセンタイル値(pt値)を算出し, 3点移動平均法で各pt値を平均化した値で曲線を平滑化し,パーセンタイル曲線として描出した。

【結果と考察】

各項目をパーセンタイル曲線で描出した際に,50pt値が口腔機能低下症の基準値を下回ったのは咬合力が81~84歳,現在歯数は75~80歳,ODK/ta/は男性が80歳前後,舌圧は75~80歳であり,他の評価項目は50pt値では全年代で基準値を上回っていた。また,口腔乾燥のように50pt値が基準値を上回る指標も認められ,口腔機能の評価によって加齢による影響は様々であることが示唆された。パーセンタイル曲線は,口腔の状態・機能と年齢との傾向を可視化でき,個人の値や集団の傾向を重ね合わせることで,個人や地域レベルでの口腔機能評価・管理に有用である可能性が示された。

(本発表は東京都健康長寿医療センター研究所が実施する板橋お達者健診(代表者:大渕修一)および草津町健診(代表者:新開省二,北村昭彦)のデータを用いた)

(COI 開示:なし,東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会承認:2018-迅15,16)