The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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加齢変化・基礎研究

[P一般-076] Red Complexの菌保有者率および相対的菌保有率は,健常者と口腔ケア困難者で違いがあるのか.

○尾田 友紀1、清水 千昌1、宮原 康太1、宮崎 裕則1、田地 豪2、岡田 芳幸1、二川 浩樹2 (1. 広島大学病院 障害者歯科、2. 広島大学大学院医系科学研究科口腔健康科学専攻口腔健康科学)

【目的】歯周病は歯を失う原因の第1位であり、全身疾患に影響を及ぼすとされる。口腔ケア困難者は口腔清掃が不十分となりやすく歯周病罹患率が高い。歯周病の要因として、細菌・環境・個体の3因子があるが、口腔ケア困難者では要因を排除することは困難であり、特に細菌因子以外は不可能な場合が多い。つまり,口腔ケア困難者の細菌因子に着目した歯周病感受性を予測するために、相対的菌比率が高い歯周病原因菌を明らかにできれば、同疾患の予防に貢献できる可能性がある。そこで、口腔清掃状態が不良である口腔ケア困難者と健常者における歯周病原因菌の比率等について、比較検討したので報告する。

【方法】歯周病の原因菌Red complexであるP. gingivalis(Pg)、T. forsythia(Tf)およびT. denticola(Td)の3菌種と慢性持続性炎症の原因とされるP. intermedia(Pi)について、口腔ケア困難な障害者と健常者の口腔内細菌叢における菌保有者率および相対的菌保有率を比較検討した。書面にて同意を得た口腔ケア困難者である重度知的障害者 (IQ36-50) (16名:以下test群)と健常者(14名:以下cont群)を対象とし歯周状態を調べ、採取した歯垢を用いて菌叢解析した。

【結果と考察】cont群と比較してtest群では歯周状態が有意に悪かった(P<0.0001)。 各群の菌保有者率は、Red Complex全菌においてtest群ではcont群と比較し高く、Piではtest群の方が低かった。各群の相対的保有菌比率は、Red Complex総菌保有率およびTfでは、test群ではcont群と比較し有意に高かった(P=0.0269, 0.0383)。一方、 Piではtest群の方が有意に低かった(P=0.0065)。Tfでは相対的菌保有率が有意に高かったことから、同菌が口腔ケア困難者の不良な歯周状態に深く関与している可能性がある。また、知的能力障害者で、女性ホルモンとの関連が指摘されるPiの相対的菌保有率が有意に低かったことから、両群では女性ホルモン等に違いがある可能性がある。結論として、歯周状態が不良な口腔ケア困難者ではTfの相対的保有菌比率は、健常者と比較して有意に高く、Piの相対的菌保有率は有意に低い。
(広島大学疫学研究倫理審査委員会第E-342号)