一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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加齢変化・基礎研究

[P一般-078] サルコペニアと関連した嚥下障害が嚥下造影検査による嚥下器官の動態に与える影響

○宮下 大志1、菊谷 武1,2,3、永島 圭悟1、戸原 雄3、佐川 敬一朗3、古屋 裕康3、矢島 悠里3、五十嵐 公美3、仲澤 裕次郎3、保母 妃美子3、礒田 友子3、田村 文誉2,3 (1. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科、3. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【目的】
嚥下造影検査(VF)で観察される嚥下関連器官の状態や嚥下時の動態とSarcopenic Dysphagia(SD)の診断基準との関連を明らかにし,SDの診断における嚥下造影検査の有用性を検討することである。
【方法】
摂食嚥下障害を主訴として来院した132名(平均年齢80.4±8.8歳)を対象とし,VF所見より,安静時喉頭位置,咽頭腔断面積,喉頭移動量を測定した。また基礎情報として,性別,年齢,原疾患,Barthel index,MNA-SF,Body Mass Indexを調査し,四肢骨格筋量(Skeletal Muscle Index:SMI),握力を測定した。摂食機能はFood Intake Level Scaleを用いた。対象者をAsian Working Group for Sarcopeniaによるサルコペニアの診断基準に従い,サルコペニア群,非サルコペニア群の2群に分類した。その後、VF所見とサルコペニアとの関連についてt検定、ロジスティック回帰分析を用いて検討を行った。
【結果と考察】
対象者のうちサルコペニアと診断された者は47名(男性20名:平均年齢83.2±6.9歳,女性27名:平均年齢85.3±6.9歳)であった。男性群では,喉頭上方移動量(p = 0.015)と咽頭腔断面積(p = 0.002)においてサルコペニア群で有意に低値を示した。女性群では,咽頭腔断面積(p = 0.002)おいてサルコペニア群で有意に低値を示した。対象者132名に対し、基本情報とVF所見を独立変数とし,サルコペニアの有無を従属変数とするロジスティック回帰分析を行ったところ,喉頭上方移動量(p = 0.006),および咽頭腔断面積(p = 0.027)がサルコペニアの有無に有意に関連していることが示された。
サルコペニア群にみられる嚥下機能の低下は,骨格筋量の低下と筋力の低下に伴う喉頭の移動および咽頭腔の拡大に特徴づけられた。サルコペニアによる嚥下関連筋群の機能低下を示す指標として,嚥下造影検査における喉頭の嚥下時の上方移動量の測定,咽頭腔断面積の測定が有用である可能性が示された。今後,嚥下造影検査によるSD診断基準が確立され迅速な診断を行うことが可能となれば,SDに対するリハビリテーションに有用な情報を与えると考える。
(日本歯科大学生命歯学部 倫理委員会承認番号:NDU-T2017-36)