The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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加齢変化・基礎研究

[P一般-088] 義歯洗浄剤および洗口液がCandida tropicalis の増殖抑制に及ぼす効果

○村上 智彦1、野村 太郎1、小林 琢也1、近藤 尚知1 (1. 岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座)

【目的】
 義歯性口内炎を呈する粘膜からはCandida 菌が多く検出される。このうち,検出頻度が高いのはC. albicans (41.5%)やC. glabrata (18.4%)と報告されている。そのため,我々は義歯床用レジンに付着させたこれらの菌に義歯洗浄剤や洗口液を使用することで菌の増殖が抑制されたことを報告してきた。本研究では,先述の2菌種に次いで検出頻度が高いとされるC. tropicalis (12.9%)に着目し,義歯洗浄剤や洗口液の使用が義歯床用レジンに付着したの増殖抑制に及ぼす効果について検討した。
【方法】
 本研究で使用した義歯洗浄剤は,酵素入りポリデント®,部分入れ歯用ポリデント®,タフデント®,青ピカ®,赤ピカ®の5種,洗口液はモンダミン®プロケアα,モンダミン®ペパーミント,リステリン®クールミント,リステリン®クールミントゼロの4種とした。
 C. tropicalis ATCC 750株を前培養後,実験用菌液として調製した。菌液を加熱重合型義歯床用アクリルレジンブロックに100 µl滴下し,好気的条件下で4˚C,2時間培養した。その後,非付着性の菌を洗い流した試料を,YPD液体培地中で37˚C,1,3,6,12時間培養した。培養終了後,試料を義歯洗浄剤および洗口液に浸漬した。浸漬時間は義歯洗浄剤ではメーカー指示に従い,洗口液では30秒間振盪(60 rpm)した(実験群)。またPBS(-)溶液中で振盪したものをコントロールとした。最終的に試料に付着していた菌を回収後,YPD寒天培地上で培養しコロニー数を計測した。
【結果と考察】
 全ての培養時間で,実験群のコロニー数はコントロールより有意に少なく(p < 0.01),減少率は約90~100%だった。このことから,義歯洗浄剤や洗口液による洗浄はC. tropicalis の増殖抑制効果を示した。本結果は我々のこれまでの研究結果と同様の傾向を示しており,他のCandida 菌に対しても同様の効果を示す可能性がある。
 本研究より,実際に使用中の義歯においても,義歯洗浄剤や洗口液の使用により義歯に付着したC. tropicalis の増殖を抑制できる可能性が示唆された。今後は,口腔内に種々の菌が存在し,バイオフィルムを形成していることや,唾液や口腔粘膜などの生体の影響も考えられることから臨床研究を行う必要があると考える。
(COI 開示:なし)