一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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全身管理・全身疾患

[P一般-093] 非経口摂取患者の口腔乾燥 ~口腔ケアの効果と栄養投与経路による比較~

○陣内 暁夫1、大内 謙太郎1、上野 陽子1、鈴木 宏樹1 (1. 医療法人井上会篠栗病院歯科)

【目的】非経口摂取患者は、唾液の分泌が減少し口腔乾燥が進行するとともに、唾液による自浄作用も失われ、口腔内は汚染されやすい。口腔乾燥は、口腔内の剥離上皮膜形成の原因であり、付着した剥離上皮膜は細菌増殖の温床となり、誤嚥性肺炎のリスクが高まる。したがって、非経口摂取患者においては、保湿に留意した頻回の口腔ケアが必要とされている。今回我々は、非経口摂取患者の口腔乾燥を、歯科専門職による口腔ケア前後の口腔粘膜湿潤度を経時的に測定することで定量評価し、分析した。

【方法】2018年6月~2019年9月の期間に歯科専門職による口腔ケアを行った入院患者43名(男性9名、女性34名、平均年齢83.9±11.5歳)を対象とした。うち、非経口摂取患者は19名(男性3名、女性16名、平均年齢85.6±11.7歳)で、経口摂取患者は24名(男性6名、女性18名、平均年齢82.6±11.5歳)であった。口腔水分計ムーカス®(ヨシダ)用いて、口腔ケア施行前、施行直後、3時間後、6時間後、24時間後の口腔粘膜湿潤度を測定した。非経口摂取患者群と経口摂取群に分類し、それぞれの口腔ケア施行前と施行後の口腔粘膜湿潤度をANOVAで比較した後post testとして、Dunnett’s testを行った。2群間の各測定時における口腔粘膜湿潤度、および経管栄養患者と静脈栄養患者の口腔粘膜湿潤度をt testで比較した。

【結果と考察】

非経口摂取患者の口腔粘膜湿潤度は、口腔ケア施行前に比し、口腔ケア施行直後で有意に増加し(p=0.009)、経口摂取患者の口腔粘膜湿潤度は、口腔ケア施行前後で差を認めなかった。非経口摂取患者と経口摂取患者の口腔粘膜湿潤度は、口腔ケア施行前(p=0.004)、6時間後(p=0.002)、24時間後(p=0.002)に有意差を認めた。経管栄養患者と静脈栄養患者の口腔粘膜湿潤度に差はなかった。

以上の結果より、非経口摂取患者は経口摂取患者に比し、口腔乾燥のリスクが高いことが改めて示された。非経口摂取患者の口腔乾燥に対し口腔ケアが有効であり、また、腸管の使用は影響しないことが示唆された。非経口摂取患者においては最低でも、6時間ごとの口腔ケア、即ち活動時間帯においては1日3回以上の口腔ケアが、口腔乾燥の重症化を予防することが示唆された。(医療法人井上会篠栗病院倫理委員会承認番号23)