The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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全身管理・全身疾患

[P一般-096] メトトレキサート過量内服に伴う重度口内炎に対し,本人のセルフケア能力に配慮した対応策を行った一例

○内田 悠理香1 (1. 岡山大学病院 医療支援歯科治療部)

【目的】

 関節リウマチの第一選択であるメトトレキサート(MTX)は週に1~3回服用して休薬期間が必要なため,服用間違いを生じるリスクが高い。また高齢者では副作用が生じやすく,重篤化しやすいため慎重投与とされている。今回,MTX過量内服で生じた重度口内炎の高齢患者に対し,本人のセルフケア能力に配慮した口腔有害事象対策を行ったので報告する。

【症例の概要と処置】

 70歳女性。既往の統合失調症は症状安定していた。他院で2008年より関節リウマチと診断されMTXの服用を開始したが,201X年3月頃に自己中断して症状悪化した。同年5月15日から10mg/週を再開したところ,誤って連日内服して骨髄抑制による汎血球減少と口内炎が生じた。5月31日に当院に緊急入院し,ロイコボリン®投与が開始された。アズノール・キシロカイン含嗽液を頻回に使用したが,口内炎による疼痛で経口摂取が困難なため,第4病日に歯科紹介となった。
 上下口唇・頬粘膜・舌下部に潰瘍を認め,接触痛も著しくプリンやヨーグルト飲料のみ摂取可能な状態であった(Grade 3: CTCAE v5.0)。口腔粘膜保護対策が急務であると判断し,MTX過量投与のため化学療法に準じてエピシル®口腔溶液(エピシル)を導入した。本人の服薬管理能力および手指操作性に配慮し,看護師見守り下で使用するよう指示した。
 第5病日にはエピシルが奏功し,全粥食を9割摂取できていた。第6病日に血球回復を認め,第7病日には粘膜炎がGrade 2に改善しつつあった。第10病日からMTX10mg/週が再開された。第11病日には接触痛がほぼ消失したため,アズノール®軟膏に移行した。口腔細菌検査でカンジダ菌陽性のため,含嗽薬をアムホテリシンBシロップに変更し,看護師に配薬を依頼した。第13病日には頬粘膜に偽膜を伴う潰瘍が一部残存するも,ほぼGrade 1に改善した。自宅退院に向けて病棟で一包化などの服薬支援が行われており,歯科では本人管理が行えていたアズノール軟膏のみ退院後も継続とした。第15病日に退院となった。

【結果と考察】

 初診時から入院経緯などを踏まえて,処方薬が重複しないように,また病棟管理で安全に使用できるように配慮した対策を講じた。その結果,退院に向けて服薬支援にも繋げられた。高齢者では,本人のセルフケア能力に着目した適切な介入を行うことが重要であると再認識した。