The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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全身管理・全身疾患

[P一般-099] 舌癌術後高齢者の嚥下機能に関連する因子の検討

○奥村 拓真1、原 豪志1、並木 千鶴1、吉見 佳那子1、山口 浩平1、中川 量晴1、中根 綾子1、戸原  玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野)

【目的】
 舌癌の術後では舌の切除や頸部郭清等により神経・筋が機能的・器質的に損失するため,摂食嚥下障害が生じる。舌癌術後の高齢者の嚥下機能に影響する因子は明らかではない。今回我々は舌癌術後の高齢患者を対象とし、嚥下造影検査によって得られる因子が術後の嚥下機能とどのように関連するかを検討した。
【方法】 
 当院口腔外科にて2017年4月~2018年12月までの間に舌癌の術後で当科に依頼のあった患者16名(男性7名,女性9名,平均年齢72.2±5.9歳)を対象とした。術後感染を認めた症例や嚥下造影検査(VF:Videofluoroscopic examination of swallowing)画像が不鮮明な症例は除外した。評価項目として年齢、性別、BMI(Body Mass Index)、舌切除範囲といった基礎情報のほか、術後の嚥下機能の指標として、FOIS(Functional Oral Intake Scale)をカルテから抽出した。また術後1回目のVF画像を解析し、総計67試行の食道入口部開大量、舌骨の移動量、咽頭残留量・咽頭収縮率(Steelらの方法)を計測した。統計は評価項目をそれぞれSpearmanの順位相関係数にて関連性を検討した。

【結果と考察】
 舌の切除範囲が半側以上は11名であった。術後FOISと相関の見られたのは年齢(r=0.435,p<0.01)、BMI(r=-0.628,p<0.01)、食道入口部開大量(r=0.575,p<0.01)、舌切除範囲(r=-0.614,p<0.01)であった。術後FOISは咽頭収縮率(r=-0.002,p=0.985)や咽頭収縮率・咽頭残留量(喉頭蓋谷:r=-0.048,p=0.711、梨状窩:r=-0.042,p=0.744)とは相関を認めなかった。一方で食道入口部開大量はFOISと強い相関を認めたため、術後の嚥下機能を予測するうえで有用な指標である可能性が示唆された。FOISが年齢と正の相関、BMIと負の相関がみられたのは舌切除範囲が年齢(r=-0.328,p<0.01)やBMI(r=0.305,p<0.01)とが相関していたことが原因と考える。今後は若年者も含め対象者を増やし、術式等も考慮に入れながら、多変量解析を行い、さらなる関連性を明らかにしていきたい。
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会 承認番号:D2015-636)