The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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地域歯科医療シンポジウム

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歯科口腔保健事業における『保健事業と介護予防の一体的な実施』を考える

座長:平野 浩彦(東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科)

[SY2-4] 結果、健康なまちづくり
~医療介護専門職がボランティアで参加するスーパー買い物ツアー~

○木村 年秀1 (1. まんのう町国民健康保険造田歯科診療所)

【略歴】
1986年:
岡山大学歯学部 卒業
同年:
岡山大学歯学部 予防歯科学講座 助手
1991年:
島根県美都町国保歯科診療所 所長
1996年:
三豊総合病院 歯科保健センター 医長
2012年:
三豊総合病院企業団 歯科保健センター センター長
2015年:
まんのう町国民健康保険造田歯科診療所 所長

現在に至る

岡山大学歯学部 臨床教授
日本老年歯科医学会(専門医,指導医,代議員)

“移動手段として自家用車を利用していない”高齢者は低栄養リスクが5.5倍!まんのう町琴南地区で後期高齢者を対象とした調査結果だ。高齢者が運転する車の事故が社会問題となっており,運転免許の自主返納が勧められているが,自身や家族が自家用車を運転できなくなれば,通院や買い物のための移動手段を失ってしまう。歯の治療も食材調達も困難となり,次第にフレイル,低栄養となっていく。調査では食事が楽しくない理由の回答で最も多かったのは「話し相手がいない」で,孤立も低栄養に影響していた。そこで,思いついたのが宅配弁当事業者とのコラボ企画「スーパー買い物ツアー」。高齢者に廃校となった中学校跡に集まっていただき,皆で食事をして,提携したスーパーマーケットにバスで買い物に行く企画だ。昨年5月,配食サービス利用者への声掛けで開始したが,当初の参加者は4,5名。しかし,月1の回を重ねるごとに,とても楽しいと評判になり,毎回参加者が増加。ボランティアとして「琴南の在宅医療介護の連絡会」のメンバーである医療介護の専門職に協力依頼をしたことで,総勢50名近くが集まるようになった。この通いの場には歯科診療所,薬局,訪問看護ステーション,訪問リハビリテーション事業所,居宅介護支援事業所などの専門職が普段着で参加しているので,気軽な健康相談の場にもなっている。食事制限され,買い物に乗り気ではなかった糖尿病の利用者には,管理栄養士が付き添いながら食べても良いものを一緒に選び,笑顔がこぼれる場面も見られた。専門職のみならずYouTuberやシンガーソングライターなども参加するようになったことで,楽しくワクワクするイベントとなっていった。みんなで楽しく食べて,おしゃべりして,歌って,買い物,スーパーを歩き回る。このツアーには,運動,口腔,栄養,社会参加のすべての介護予防の要素を含まれている。在宅医療介護を担うメンバーがボランティアとしてかかわっていることを考えると,当地区の地域包括ケアシステム構築の一環であり,高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施事例となりうるのかもしれない。本シンポジウムでは、「気が付けば健康になれる地域づくり,まちづくり」を目指す我々の取り組みを紹介するので、皆様の地域活動のご参考にしていただければ幸いである。

スーパー買い物ツアー:https://www.youtube.com/watch?v=dwruLGnjn2w
※(COI 開示:なし)