[SY3-4] 地域の開業医における多職種連携の歩みと、必要とされる条件
【略歴】
2000年:
東京都立大学工学部 応用化学科 卒業
2001年:
東京医科歯科大学歯学部 学士編入学
2005年:
東京医科歯科大学歯学部 卒業
2009年:
東京医科歯科大学大学院 高齢者歯科学分野 修了
2006年~2010年:
国立感染症研究所 細菌第1部研究員
2011年:
カナダ・エドモントン ミザリコーディア・コミュニティ病院 摂食嚥下リハビリテーション部門へ留学
2012年:
敬崇会 猪原歯科・リハビリテーション科 訪問診療部長(現職)
2000年:
東京都立大学工学部 応用化学科 卒業
2001年:
東京医科歯科大学歯学部 学士編入学
2005年:
東京医科歯科大学歯学部 卒業
2009年:
東京医科歯科大学大学院 高齢者歯科学分野 修了
2006年~2010年:
国立感染症研究所 細菌第1部研究員
2011年:
カナダ・エドモントン ミザリコーディア・コミュニティ病院 摂食嚥下リハビリテーション部門へ留学
2012年:
敬崇会 猪原歯科・リハビリテーション科 訪問診療部長(現職)
当院は開院70年を迎える歯科診療所であり、演者は2011年に3代目である夫と共に診療に加わった。もともと当院は1990年ころより近隣の精神科病院への歯科訪問診療を実施していた経緯もあり、訪問先の医師などとの連携は比較的密に行われていた。そのため、摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)を専門とする演者が診療所に加わった際には、嚥下リハや歯科訪問診療の依頼が自然と増えてくるものと考えていたが、現実はそう甘くはなく、依頼がほとんどない状態が続くこととなった。
この状況を打開するために我々は、依頼元となるであろう医師や訪問看護、ケアマネジャーが集まる地域の勉強会に積極的に参加し、講演の最後に必ず名乗ってから質問するということを常に行うようにし、まずは自らが提供可能な医療の内容を知ってもらえるように努めた。また、診療情報提供書のやり取りも丁寧に、こまめに行い、地域の医師からの信頼を得られるよう努力を行った。その結果、外来部門・訪問部門ともに、医師から紹介される新患が徐々に増えるようになったが、それに伴って新たな問題も発生してきた。それは、歯科的な対処だけでは問題解決が不可能な、生活面へのアプローチが必要な患者が増えてきたことである。
そこで当院では、外来部門と訪問部門の双方に、ケアマネジャー資格を有する歯科衛生士を、専任の地域連携担当者として配置し、医療だけでなく、担当ケアマネを始めとする介護との連携も密に図れる体制を構築した(当院ではスタッフに対し、ケアマネ資格取得を積極的に後押ししており、院内勉強会などを開催している)。具体的には、外来に独居高齢者が受診した際には、歯科とは直接関係のない話であっても近況を聞くようにし、必要に応じて地域包括支援センター等と連絡を取り合うようにしている。また訪問部では、病院から退院する際の退院時カンファレンスや、介護保険におけるサービス担当者会議にはできる限り参加するようにしている。さらに院内における情報共有は、独自開発のITシステムを活用しており、チームとしての治療方針の統一が図れるようにしている。
このように、院内外で連携を行うためには、ヒトとシステムへの投資と、情報共有を重んじる組織文化醸成の両輪が必要となり、この実現には、トップの覚悟が求められていると言えるだろう。
(COI開示:なし)