The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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学術シンポジウム

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口腔機能低下症の「疑問」に応える

座長:水口 俊介(東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野)、池邉 一典(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野)

[SY6-1] 口腔機能低下症に対して思うこと

○吉田 光由1 (1. 広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)

【略歴】
1991年:
広島大学歯学部 卒業
1996年:
広島大学歯学部歯科補綴学第一講座 助手
2004年:
広島大学大学院医歯薬学総合研究科 講師(学内)
2008年:
広島市総合リハビリテーションセンター 医療科部長
2016年:
広島大学大学院医歯薬保健学研究科先端歯科補綴学 准教授
2019年:
広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学 准教授

ご存知のように演者は、口腔機能低下症に対して本学会で一番疑問を投げかけてきたのではないかという自負がある。そこで今回、これまでに感じている疑問をあげ、この2年間の間にその方向性が見えてきたこと。今後の課題となるべきことを整理して、本シンポジウムで皆さんと話し合いできればと考えている。

演者が口腔機能低下症に対して感じている疑問は、

1.検査項目やその基準値についての妥当性

2.要介護高齢者等への対応

3.ゴール設定

4.欠損補綴との関係

5.口腔機能低下への気づき

6.加齢変化に応じた対応

といったところである。このうち、1.検査項目とその基準値についての妥当性については座長の池邉先生の老年歯学の総説をはじめいくつかの調査結果からみて、今般早々の変更ではなく、縦断調査等を実施していく中で科学的根拠を蓄積していきながら検討していく課題ではないかと考えている。2.要介護高齢者等への対応については、今回の診療報酬改定で、口腔機能管理加算から口腔機能管理料となったことで、居宅療養高齢者は対象とはならないことがより明確となった。一方で、これらの者に対して口腔機能に関する検査を実施する必要がないと言っているわけではなく、例えばサルコペニアの嚥下障害の診断基準の一つに最大舌圧が20kPa未満といった指標が提案されているように、口腔機能障害、摂食嚥下障害の診断に向けて、口腔機能に関する検査法の活用については、今後とも検討していかなければならない大きな課題だと感じている。
3~6は、今回のシンポジストの先生方がそれぞれまとめられていることを通じて、会場内で今後に向けた取り組みが話し合われればいいと思われるが、このたび「「JMS医療用ペコぱんだ」」が訓練器具として認可されたように、ともすれば訓練方法を指導して検査値をあげることが口腔機能低下症の目標となっていく可能性も危惧しており、口腔機能低下症に対する治療や訓練を通じて何を指導していって何をゴールとするのかについてその考えをみんなで共有したいと強く願っている。