The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

Fri. Jun 11, 2021 2:30 PM - 4:30 PM 認定医Line4 (Zoom)

[認定P-28] 重度糖尿病を有する高齢肺癌患者の化学療法において,複数科医師と連携し周術期等口腔管理が奏功した一例

○中島 正人1、髙橋 裕2 (1. 福岡歯科大学総合歯科学講座訪問歯科センター、2. 福岡歯科大学長)

【目的】

 がん化学療法中の口腔合併症としては,口腔内感染巣の急性化やそれに引き続く全身感染症の発症,さらには口腔清掃不良による口腔粘膜炎の増悪などが挙げられる。特に複数もしくは重度の併存疾患を有する高齢癌患者へのがん化学療法時には,口腔内感染源への対処法や除去の時期に苦慮することがある。今回,コントロール不良の重度糖尿病を有する高齢肺癌患者のがん化学療法時に,複数科の医師と連携した全身管理のもとで,重度歯周炎の歯の抜去を安全に行い,しかも化学療法中の口腔管理により口腔粘膜炎の重症化を免れた症例を経験したので報告する。なお,本症例の発表に際し,事前に本人の了承を得た。

【症例の概要と処置】

 74歳女性,転移性肺癌(原発:直腸癌)により手術不適応症例のため,令和2年11月に当院外科にて化学療法施行予定となり,口腔内感染源精査・除去を含む周術期等口腔機能管理依頼にて当科初診となった。初診時口腔内所見として,⑥54③┘Brに重度動揺を示し,歯周ポケットは63┘とも8mm以上,デンタルX線写真にて根尖側1/3以上の重度歯槽骨吸収像を認めた。化学療法前の抜歯を検討したが,コントロール不良の2型糖尿病を併存しており,外科及び内科(糖尿病専門医)主治医と協議し,初回化学療法前は内科治療を優先し,抜歯は初回化学療法後のクール間に行うこととした。一方,初診時PCR値は100%と不良であったため,化学療法開始前に歯周基本治療および口腔衛生指導を行い,化学療法開始時には約20%まで改善した。化学療法開始後4日目に上口唇や左側頬粘膜に口腔粘膜炎(グレード1)が発症したが,その後の増悪は認めず7日目に治癒した。一方,動揺歯については,化学療法中に6┘に軽度の自発痛を認めたが,症状は一過性で改善した。初回化学療法後に,血糖値の改善を認め,内科主治医の許可のもと,抗菌薬服用下にて63┘の抜歯を行った。その後,口腔管理を継続して行うことで,口腔粘膜炎の発生もなく良好な経過を辿っている。

【結果と考察】

 今回,重度糖尿病を有する高齢肺癌患者に対し,複数科の医師と連携した全身管理のもとで,安全に口腔内感染源除去を行うことができた症例を経験した。高齢癌患者は,複数の併存疾患を有する場合が多いことから,今後も複数の専門医と連携した全身管理のもとでの周術期等口腔機能管理を行う重要性が示唆された。(COI開示:なし)