The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

認定医審査ポスター

Live配信抄録 » 認定医審査ポスター

認定医審査ポスター

Fri. Jun 11, 2021 2:30 PM - 4:30 PM 認定医Line4 (Zoom)

[認定P-29] 脳梗塞既往の重度摂食嚥下障害患者に対し多職種が連携し栄養介入と看取りに携わった症例

○井藤 克美1、高橋 浩二2 (1. アペックスメディカル・デンタルクリニック、2. 昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔リハビリテーション医学部門)

「目的」

食べるという行動は人間の根源的な欲求であり,近年経管栄養等により,嚥下困難者では経口摂取出来なくても栄養補給や生命の維持が可能となっている。

しかし,口から食べるという行動は栄養補給だけではなく,人間の楽しみであり,食事を与える家族にとっては愛情の表現でもあり,絆を深める行為でもある。

今回,ペースト食からの食上げは困難と診断された患者に対し訪問歯科診療を行い,誤嚥性肺炎や低栄養の懸念,窒息のリスクに同意を得た上で,胃瘻造設はせず,最期まで経口摂取とし,その摂食嚥下機能のみならず,QOLが向上した症例を経験したので報告する。



「症例の概要と処置」

87歳女性。2017年3月入院。既往歴は脳梗塞,認知症,うつ病、肺空洞病変,尿路感染症。2019年4月急性期脳血管障害発症の意識障害で入院。右半側空間無視,構音障害を主症状とし,心原生脳塞栓症と診断された。酸素化不良長期臥床状態,全身筋力低下,自己体動困難,ならびに嚥下障害も併発しミキサー食摂取中に不顕性誤嚥のため,SPO2が55%に低下し,一時経口から経管栄養へ移行。VF検査の結果嚥下食3のミキサー食,6%トロミ水によって,咽頭残留の消失を確認。

退院後,同年6月から摂食機能の評価に基づき食形態を決定,摂食嚥下機能訓練を開始。訪問診療初診時は148cm,33.3k。痰や痂皮の除去等,口腔内の衛生管理,アイスマッサージ,舌ストレッチ,口腔周囲筋や唾液腺のマッサージ,残存歯の治療,使用義歯のPAP化を行い,毎回施設ナース,職員立合いのもとリハビリを実施し,指導文書にて多職種で情報共有した。高カロリーゼリーにより補助栄養を強化し,施設からは食事・バイタルチャートの記録を受け取り,医療連携を行った。体力増強後,同年8月にVE検査での再評価を行った。

「結果と考察」

本症例では不顕性誤嚥はあるものの,多職種の連携による介入が最期まで経口摂取を可能にし,歯科介入により約3か月で誤嚥性肺炎を起こすことなくソフト食への食上げが可能となった。経口摂取量の増加は体力の向上によって歯科治療も可能となっただけではなく,SPO2の向上、栄養状態とQOLの向上に寄与したと考えられる。経口摂取は患者さんの満足感にも繋がった事からQOLには相関性があると考えられた。

「結論」

食への介入が,本人のみならず家族の達成感や満足感をも向上させることが示唆された。