[P一般-005] 食道刺激を利用したヒト嚥下運動を誘発する新たな手法の開発 ―脳梗塞患者を対象とした検討―
【背景と目的】摂食嚥下障害の臨床において,重度嚥下障害者に対する訓練法は難渋することが多い。そのため,嚥下機能改善よりは,運動障害に対する代償的アプローチに注力する傾向がある。そこで,我々は,重度嚥下障害者でも効果的に嚥下運動を誘発させる訓練法として,食道刺激によって誘発される嚥下反射:Stimulation of the esophagus activates the pharyngeal swallow response (EPSR)に注目してきた(Taniguchi, Aoyagi et al, 2017,2018,2019)。本研究は,本法の臨床応用を目指すことを目的に,嚥下障害者を対象とした検証を行ったので報告する。
【方法】脳血管障害を既往に持つ嚥下障害者33名(平均73.6歳±9.9歳)を対象とした。脳梗塞16名(中大脳動脈4名,内頸動脈4名,延髄3名,橋2名,放射冠2名,視床1名),脳出血17名(視床5名,くも膜下4名,被殻2名,視床+被殻2名,前頭葉2名,側頭葉2名)であった。患者の鼻腔より高解像度マノメトリー(HRM)を挿入し,反対の鼻腔より10Frの吸引用カテーテルを挿入し,先端はUES下端から下方5cmに留置した。カテーテルから,1℃にコントロールされた5 ml,10mlのとろみ水を5ml/sの速度で注入し,それぞれ注入から舌骨移動開始までの時間:潜時をVFより算出し,脳血管障害の部位,注入量で潜時およびHRMのデータを比較した。
【結果と考察】EPSRが15秒以内に誘発されたのは,5 ml注入時は74%(25 / 33名),10ml注入時は88%(29 / 33名)であった。EPSRが誘発されないケースは脳血管障害の部位として視床(4名),視床+被殻(2名)の脳出血,脳幹(2名)の脳梗塞の既往を有していた。注入量による違いでは,脳血管障害の部位に関係なく,5 mlと比較して10 ml 注入時の潜時が有意に短縮した(p<0.01)。本研究結果より,脳血管障害を既往に持つ患者でもEPSRが誘発されることが明らかとなった一方で,後遺症として感覚障害を既往に持つ者はEPSRが誘発されにくい可能性が示唆された。今後は,EPSRが誘発されにくい患者に対して,注入量,注入液を変化させることでよりEPSRが誘発されやすい条件を検索する予定である。
(藤田医科大学 倫理審査委員会承認番号第15-315号)
【方法】脳血管障害を既往に持つ嚥下障害者33名(平均73.6歳±9.9歳)を対象とした。脳梗塞16名(中大脳動脈4名,内頸動脈4名,延髄3名,橋2名,放射冠2名,視床1名),脳出血17名(視床5名,くも膜下4名,被殻2名,視床+被殻2名,前頭葉2名,側頭葉2名)であった。患者の鼻腔より高解像度マノメトリー(HRM)を挿入し,反対の鼻腔より10Frの吸引用カテーテルを挿入し,先端はUES下端から下方5cmに留置した。カテーテルから,1℃にコントロールされた5 ml,10mlのとろみ水を5ml/sの速度で注入し,それぞれ注入から舌骨移動開始までの時間:潜時をVFより算出し,脳血管障害の部位,注入量で潜時およびHRMのデータを比較した。
【結果と考察】EPSRが15秒以内に誘発されたのは,5 ml注入時は74%(25 / 33名),10ml注入時は88%(29 / 33名)であった。EPSRが誘発されないケースは脳血管障害の部位として視床(4名),視床+被殻(2名)の脳出血,脳幹(2名)の脳梗塞の既往を有していた。注入量による違いでは,脳血管障害の部位に関係なく,5 mlと比較して10 ml 注入時の潜時が有意に短縮した(p<0.01)。本研究結果より,脳血管障害を既往に持つ患者でもEPSRが誘発されることが明らかとなった一方で,後遺症として感覚障害を既往に持つ者はEPSRが誘発されにくい可能性が示唆された。今後は,EPSRが誘発されにくい患者に対して,注入量,注入液を変化させることでよりEPSRが誘発されやすい条件を検索する予定である。
(藤田医科大学 倫理審査委員会承認番号第15-315号)