The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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一般部門

[P一般-006] 高齢嚥下障害患者に対し訪問診療と管理栄養士同席のオンライン診療を併用し経口摂取支援を行った症例

○玉井 斗萌1、原 豪志2、並木 千鶴1、中川 量晴1、中根 綾子1、山口 浩平1、吉見 佳那子1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. 神奈川歯科大学附属病院全身管理高齢者歯科)

【目的】

誤嚥性肺炎(Aspiration Pneumonia: AP)発症後禁食となり,経管栄養にて在宅療養となる患者は多い。今回APを繰り返し経鼻胃管(Nasogastric tube: NG)で栄養摂取していた高齢者に対し,訪問診療及びオンライン診療を行い,NGを抜去し3食全量経口摂取可能となった患者を報告する。

【症例の概要と処置】

対象は86歳の男性で,既往歴は本態性振戦,糖尿病,高血圧症,心房細動であった。2019年8月にAPで入院した。退院後経口摂取していたが,2019年11月に二度APで入院し,嚥下機能不良のためNG管理で自宅退院した。2019年12月に経口摂取の可否を主訴として,嚥下機能評価のため家族より診療依頼があった。訪問診療の初診時は,寝たきりで体重は43.0kg,体格指数(Body mass index: BMI)は16.8であった。嚥下内視鏡検査でとろみ水を摂取させ,嚥下後に梨状窩多量残留と誤嚥を認めた。嚥下反射惹起遅延及び咽頭収縮不良を認め,喀出力の低下もあり,直接訓練が困難であると判断した。主治医や管理栄養士(Registered Dietitian: RD)と相談し,NGからの栄養量の増加を図り,1ヶ月に二回程度訪問診療を行った。2020年1月から直接訓練を家族に指導し,お楽しみレベルでの経口摂取が可能となった。また義歯調整を行い,食形態及び食事量をアップした。2020年4月に新型コロナウイルス感染症の二次感染予防で当科の診療制限により,情報通信機器を用いたオンライン診療をRDと家族に提案し,オンラインにて食事支援を行った。オンライン診療では,オンライン支援者としてRD同席のもと,NG抜去前の摂食状況及び栄養状態の確認,摂食訓練指導を行った。患者は3食経口摂取が可能となったため,2020年5月にNGを抜去した。

【結果と考察】

 患者は当科介入後,約6ヶ月でNGを抜去し3食経口摂取可能となった。体重は46.1kgになり,BMIは18.0まで改善した。本症例では,訪問診療だけでなくオンライン診療を行い,診療を中断しなかったため,適切な時期にNGの抜去を行うことができた。対面診療を行えない場合にはオンライン診療を積極的に取り入れ,滞りなく摂食嚥下指導を行うことが重要である。さらにRDの同席があったことで,指導内容がより正確に伝わったのではないかと考える。