The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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一般部門

[P一般-010] ビスホスホネート製剤とステロイド製剤がインプラント周囲硬軟組織に与える影響

○黒嶋 伸一郎1、佐々木 宗輝1 (1. 長崎大学生命医科学域口腔インプラント学分野)

【目的】

近年,インプラント治療を受けた要介護状態の高齢者が多く見受けられている.高齢者ではビスホスホネート(BP)製剤やステロイド製剤の使用頻度が高く,インプラント周囲にBP製剤関連顎骨壊死(BRONJ)を発症した要介護状態の高齢者も散見されるようになってきた.そこで本研究は,BP製剤とステロイド製剤がインプラント周囲の硬軟組織に与える影響を明らかにすることを目的とした.

【方法】

雌性Wistar系ラットを使用した.右側上顎第一大臼歯を抜歯して4週間後に,BP製剤(ALN),ステロイド製剤(DEX),ALNとDEXの併用投与(ALN/DEX),ならびに生理食塩水(VC)のいずれかの投与を開始した(各群n = 14).抜歯16週間後にラット用インプラントを抜歯相当部に埋入し,その2週間後に屠殺した.創部の開放状態,インプラント周囲骨組織の3次元的構造,ならびにインプラント周囲硬軟組織の病理組織学的・組織形態学的・免疫病理組織学所見を定量解析した.

【結果と考察】 

VC群の多くは軟組織が閉鎖して正常に治癒していたが,ALN/DEX群ではその全てでインプラント周囲の軟組織が裂開して骨露出をしていた.ALN/DEX群では壊死骨と空の骨小腔の広範囲分布に加え,多形核白血球の著しい浸潤とコラーゲン産生が有意に低下するという病理組織学的所見が認められた.またALN/DEXでは血管数の有意な減少とマクロファージの有意な増加が起こり,M2とM1マクロファージの比率がM1へ大きくシフトしているという免疫病理学的所見が認められた.一方,DEX群でも壊死骨の有意な増加やM1マクロファージへのシフトは起こっていなかったが,一部では創傷治癒遅延が認められた.以上から,インプラント周囲軟組織における血管新生の抑制,持続的炎症ならびにM1マクロファージの集積が,インプラント周囲炎硬軟組織に惹起される治癒遅延と関連している可能性が考えられた.本研究結果は,インプラント周囲に起こるBRONJの病態と病因解明に大きく貢献できると思われた.

(長崎大学 動物実験委員会承認番号 1609211341-4)