The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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一般部門

[P一般-011] 進行性核上性麻痺患者における嚥下障害出現から胃瘻増設までの経時的変化 -3症例の検討-

○岩下 由樹1、佐野 大成1、道津 友里子2、梅本 丈二1、溝江 千花1、梅田 愛里1 (1. 福岡大学病院 摂食嚥下センター、2. 高良台リハビリテーション病院)

【緒言】
 進行性核上性麻痺(以下P S P)は、眼球の随意運動を進行性に障害し、動作緩慢、進行性体軸性ジストニアを伴う筋強剛、仮性球麻痺、および認知症をもたらす、まれな中枢神経系の変性疾患であり、80%に嚥下障害が見られる。罹患期間は5〜10年とされ、死因は誤嚥性肺炎、窒息、栄養失調、転倒による外傷の頻度が高いとされている。今回、我々はP S P患者の栄養管理が最終的にどのような経過を辿ったのかを調べるため、代表的な3症例の栄養管理方法について、当院の診療録と転院後の医療機関からの情報をもとに検討した。
【症例1】歩行時のふらつきで発症し、その6年後に確定診断、7年11ヶ月で嚥下障害が出現した。V Fでとろみ水での誤嚥を認めたため、全粥きざみ食、水分中間のとろみへ変更した。嚥下障害出現後2ヶ月で胃瘻造設した。
【症例2】手の震え、足のつまずきで発症し、その3年後に確定診断、頸部後屈あり。6年1ヶ月で嚥下障害が出現した。V Eで嚥下反射の軽度惹起遅延、喉頭侵入を認めたため、全粥食へ変更、嚥下障害出現3ヶ月後にとろみ食へ変更、1年後にミキサー食へ変更した。V Fで嚥下反射の惹起遅延、とろみ水、固形物での誤嚥を認めたため、嚥下障害出現1年1ヶ月後に経鼻栄養、1年2ヶ月後に胃瘻造設した。
【症例3】精神科かかりつけであったため、発症時期は不明。嚥下障害が出現し、その1年8ヶ月後に、V Fで嚥下反射の惹起遅延、不顕性誤嚥を認めたため、ミキサー食、水分濃いとろみへ変更、1年9ヶ月後に確定診断された。認知障害あり(M M S E19点)。嚥下障害出現2年後に経鼻栄養へ移行し、2年3ヶ月後に胃瘻造設した。
【まとめ】
 今回、胃瘻造設に至った3症例の経過を追跡した。それぞれ、嚥下障害出現後2ヶ月、1年2ヶ月、2年で胃瘻造設に至った。P S Pは、最初の症状の発現から3〜4年後に診断されることが多い。確定診断の時期に関わらず、嚥下障害の出現から2年以内に経口摂取が困難となっており、胃瘻造設までの経口摂取や栄養管理をサポートしていく必要があると考える。そのためには、定期的な嚥下評価、神経内科主治医との連携、情報交換が重要であることが示唆された。