一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-27] 長期に関わったアルツハイマー病患者に対する摂食嚥下リハビリテーションの1例

○安田 順一1 (1. 朝日大学歯学部口腔病態医療学講座障害者歯科学分野)

【目的】

 以前より訪問歯科診療を受けていたが、病状の進行とともに近歯科医院での対応が困難になったため、在宅で摂食嚥下評価と指導の依頼を受け、入院下で歯科治療を行った。退院後も、訪問歯科診療で定期的口腔衛生管理と摂食嚥下指導を行った症例を報告する。

【症例の概要と処置】

 63歳男性。初診は2017年5月である。10年前に若年性アルツハイマー病と診断された。四肢関節の拘縮のため、約5年前から寝たきり状態で全介助であった。体重54kg。合併症としてパーキンソン病、ピック病、てんかんがあり、身体障害者手帳1級、要介護度5、生活自立度C1、認知症自立度IVであった。抗てんかん薬を服用していた。主な介護者は妻で、毎日の朝夕排泄介助と昼食の摂食介助などの訪問介護サービスも利用していた。2年前から近歯科の訪問歯科診療を受けていたが、う蝕治療と嚥下機能の精査を希望して当科を紹介された。

 多数歯のう蝕と歯周炎を認めた。摂食状況は全介助で、おじやと苺に加えてラコール2本/日を摂取していた。食事途中で動作が止まるため、口唇や喉を刺激して嚥下反射を誘発させながら摂食介助を行っている。お茶や水はムセるため、水分摂取としてスポーツ飲料を摂取していた。VE検査 では、おじやは食塊形成不全で米飯は粒が残った状態で梨状窩と喉頭蓋谷に残留を認めた。その後にラコールやスポーツ飲料、嚥下ゼリーと交互嚥下することで、残留物は嚥下されていた。苺は舌で潰して嚥下していた。喉頭侵入を認めたが、検査中に明らかな誤嚥は認めなかった。う蝕について、1週間入院し14歯を抜歯し、3歯を保存歯科治療した。退院時の残存歯は13本であった。退院前日は、嚥下・口腔機能に対して在宅ケアについて妻を含めたケア担当者会議を行い情報共有した。

 退院後は、在宅訪問で定期的口腔管理と摂食嚥下リハビリテーションを継続し、ケア関係職種で毎月情報共有を行った。1年後の体重は50.9kgと低下し、VE検査では食塊は咽頭残留し喉頭侵入を認め、食形態をミキサー食に変更した。その後、誤嚥性肺炎のため1年ほど入退院を繰り返した。

【結果と考察】

 嚥下機能低下と誤嚥のリスクが高い状態であることを家族は理解した上で、在宅での経口摂取の維持を望んでいた。家族の思いを尊重し、専門的口腔ケアや嚥下指導を継続している。