[摂食P-02] 経口摂取を禁止された筋萎縮性側索硬化症の患者に対して摂食機能療法を行い、安全な経口摂取を支援した症例
【目的】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが選択的に障害される神経変性疾患である。球麻痺型では摂食嚥下機能が障害され、経口摂取が困難になる。機能低下が進行していく病態において、安全が優先され、経口摂取を禁止されることは稀ではない。安全な経口摂取に向けた支援を多職種と連携して行い、一定の機能改善およびQOLの向上に寄与した症例を通じて検討を行った。
【症例の概要と処置】
79歳、男性。令和Y年X月に著明な嚥下機能の低下を認め、当院外来を受診した。嚥下造影検査では咽頭収縮の不良と右側食道入口部の開大不全を認めた。その後、ALSの診断に至った。神経内科にて検査入院中に誤嚥性肺炎を発症し、胃瘻造設がなされた。神経内科医から経口摂取を禁止することを推奨された。同年X+6月に退院し、在宅訪問診療が開始された。患者は経口摂取の希望が強く、在宅医の協力を得て、当院の診療再開に至った。嚥下造影検査(VF)を行い、一側嚥下(30度リクライニング位、左側臥位、頸部右側回旋)を指導し、直接訓練を開始した。間接訓練として、努力嚥下、息こらえ嚥下、メンデルソン手技を指導した。また、舌接触補助床(PAP)の作製を行った。医師、看護師、介護支援専門員と共に支援体制を構築した。月に1度VF評価により訓練の経過確認を行い、訪問診療にて摂食機能療法を行った。
【結果と考察】
直接訓練はゼリー(学会分類2013, コード0j)を10口から開始し、段階的に食形態のレベルアップおよび摂取量の増加を計画した。訓練前後の口腔ケアや喀出法を指導し、誤嚥性肺炎のリスク低減を重視した。1か月後にはミキサー食(コード2-2)の摂取を開始した。2か月後にはPAPを使用し、座位にて体幹の傾斜と頸部回旋を行うことで、ソフト食(コード3)の摂取が可能になった。摂取量は30口程度で維持している。また、家族と食卓を囲んで食事をする生活機能の改善を実現し、QOLの回復に寄与した。本症例において安全な経口摂取の継続が可能であるのは、嚥下代償法の獲得や誤嚥のリスク低減に向けた対応が実践できたためと考えられた。また、多職種間で綿密な情報共有を行い、支援体制を構築した中で、摂食機能療法を行うことが出来たことが、安全な経口摂取に繋がったと考えられた。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが選択的に障害される神経変性疾患である。球麻痺型では摂食嚥下機能が障害され、経口摂取が困難になる。機能低下が進行していく病態において、安全が優先され、経口摂取を禁止されることは稀ではない。安全な経口摂取に向けた支援を多職種と連携して行い、一定の機能改善およびQOLの向上に寄与した症例を通じて検討を行った。
【症例の概要と処置】
79歳、男性。令和Y年X月に著明な嚥下機能の低下を認め、当院外来を受診した。嚥下造影検査では咽頭収縮の不良と右側食道入口部の開大不全を認めた。その後、ALSの診断に至った。神経内科にて検査入院中に誤嚥性肺炎を発症し、胃瘻造設がなされた。神経内科医から経口摂取を禁止することを推奨された。同年X+6月に退院し、在宅訪問診療が開始された。患者は経口摂取の希望が強く、在宅医の協力を得て、当院の診療再開に至った。嚥下造影検査(VF)を行い、一側嚥下(30度リクライニング位、左側臥位、頸部右側回旋)を指導し、直接訓練を開始した。間接訓練として、努力嚥下、息こらえ嚥下、メンデルソン手技を指導した。また、舌接触補助床(PAP)の作製を行った。医師、看護師、介護支援専門員と共に支援体制を構築した。月に1度VF評価により訓練の経過確認を行い、訪問診療にて摂食機能療法を行った。
【結果と考察】
直接訓練はゼリー(学会分類2013, コード0j)を10口から開始し、段階的に食形態のレベルアップおよび摂取量の増加を計画した。訓練前後の口腔ケアや喀出法を指導し、誤嚥性肺炎のリスク低減を重視した。1か月後にはミキサー食(コード2-2)の摂取を開始した。2か月後にはPAPを使用し、座位にて体幹の傾斜と頸部回旋を行うことで、ソフト食(コード3)の摂取が可能になった。摂取量は30口程度で維持している。また、家族と食卓を囲んで食事をする生活機能の改善を実現し、QOLの回復に寄与した。本症例において安全な経口摂取の継続が可能であるのは、嚥下代償法の獲得や誤嚥のリスク低減に向けた対応が実践できたためと考えられた。また、多職種間で綿密な情報共有を行い、支援体制を構築した中で、摂食機能療法を行うことが出来たことが、安全な経口摂取に繋がったと考えられた。