The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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症例・施設

[P一般-073] 多発性骨髄腫治療中に薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)により顎骨が自然露出したと考えられる一例

○服部 馨1、原田 枝里1、髙澤 理奈1、久野 彰子1 (1. 日本医科大学付属病院 口腔科)

【目的】
 薬剤関連顎骨壊死(以下MRONJ)は骨吸収抑制剤投与後の観血的処置や不適合な義歯の使用により発症率が高くなるという報告がある。しかし今回、多発性骨髄腫治療中にMRONJにより自然に顎骨が露出したと考えられる一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 82歳女性。多発性骨髄腫に対して当院血液内科に通院しており、既往歴は高血圧、Ⅱ型糖尿病、慢性腎臓病であった。X年3月に、左側上顎結節付近の疼痛のために、当科受診となった。上顎は無歯顎であり、所持していた総義歯は3週間前から使用できておらず、疼痛の原因として義歯不適合は考えにくかった。その他の原因として、8年前からデノスマブ等の骨吸収抑制剤が投与されていたため、MRONJを疑った。疼痛出現後、主治医の判断でデノスマブ投与が中断されていたが、疼痛や腫脹が継続したため抗菌薬を投与したところ、症状の改善が認められた。X年8月にデノスマブ投与が再開されたが、11月には左側上顎結節付近の痛みが再発し、X+1年1月にデノスマブ投与は中止となった。X+1年3月に以前より疼痛があった部位より排膿が認められ、精査したところ腐骨の分離が確認できた。局所麻酔下にて腐骨除去を行ったところ、創部は上皮化し症状も消失した。その後、X+1年5月に以前より動揺のあった右下第一大臼歯が自然脱落し、隣接したその他3本を保存困難のため抜歯したところ、右側下顎骨に4歯分の骨露出が生じた。当部位にも疼痛が継続したため、骨露出部位の洗浄や抗菌薬を投与していたところ、X+1年9月に腐骨が分離し、自然脱落した。その後、創部は上皮化し症状も消失した。現在、MRONJ再燃の所見はみられないが、定期的な口腔観察を継続している。
【結果と考察】
 疼痛の原因として義歯不適合は考えにくかったことから、MRONJを疑い経過観察を開始したところ、無歯顎であった上顎骨が自然に露出した。上顎骨の症状が消失後、下顎にも骨の露出が生じた。上顎に関しては未処置の状態で、下顎に関しては観血的処置以前からMRONJを発症していたと考えられる。MRONJでは、骨隆起部などから骨が自然に露出することは知られているが、観血的処置を行わない場合でも骨露出が起こりえることに注意し、一般的な歯科疾患との鑑別と、経過観察、および適切な処置が必要であると考えられた。
(COI:開示なし)