一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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歯科衛生士部門

[P一般-036] 診療室でメインテナンス中に口腔機能低下症の管理を行った1例(第1報)

○三角 洋美1 (1. 青山歯科室)

【目的】
 高齢者は、加齢及び全身疾患などの影響により心身の活動が低下するにつれて、社会活動の範囲が縮小し日常生活での自立度低下に陥りやすい。こうした心身機能の低下は、全身の衰えであるフレイルを経て要介護状態に至る主要な要因である。近年、口腔機能の低下した状態であるオーラルフレイルが、低栄養や筋力の低下を通じて、このようなプロセスが促進することが知られるようになり、2018年4月、口腔機能の重症化予防の観点から口腔機能低下症の検査料と管理料が保険導入された。今回、10年間メインテナンスを継続する中で、著しい体重減少の認められた患者を対象に、口腔機能管理を実施し、6ヶ月が経過したので結果を報告する
【症例の概要と処置】
 72歳、男性。前立腺肥大と脂質異常症での服薬を除き、大きな全身疾患はない。患者から6ヶ月間で6kg体重が減少したという訴えがあり、その時期にはメインテナンス中に無意識に口を閉じるようになっていた。その状態から口腔機能低下症が疑われたため、口腔機能低下症の診断項目の中の舌苔付着度、口腔水分計による口腔湿潤度、舌圧測定器による低舌圧の評価およびEAT-10を用いた嚥下機能について評価を行い、同時にRSST、5m歩行、口唇閉鎖力、握力を計測した。体重は聞き取りとした。口腔機能管理として口腔周囲の筋力増強を目的として口唇閉鎖訓練を歯磨き時に5回以上は行うことを指示し、介入から6ヶ月後に再評価を行った。
【結果と考察】
 6ヶ月という短い介入で、舌苔の付着は50%から33%に減少、2kPaの舌圧の増加、EAT-10の合計点数が6点から2点への減少が認められた。また、RSSTは0回から1回に改善し、握力が1.1kg増加するとともに体重も聞き取りで3kg増加したことから、今後も口腔機能管理を継続し、第2報として報告する予定である。歯科医院を訪れる患者も高齢化が進行し、嚥下機能の低下とともに、徐々にフレイル状態に陥っている者も多い。特に男性では、定年退職を境に社会とのつながりが希薄になり、社会参加や身体活動の低下から生活範囲が縮小し、心身の機能低下からフレイルドミノを起こしやすい。フレイルから要介護状態に移行することなく健やかな自立した生活を続けるために、オーラルフレイルが疑われた時点で、口腔機能低下の重症化を予防するために介入することが望ましいと思われる。