The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(ポスター)

e-ポスター抄録 » 一般演題(ポスター)

歯科衛生士部門

[P一般-038] 介護士の口腔環境に対するモチベーションの維持にリモートセミナーが貢献した2例

○常清 美佑1、縄田 和歌子1、中島 正人2、堤 貴司2、森田 浩光2、牧野 路子2 (1. 福岡歯科大学医科歯科総合病院 歯科衛生士部、2. 福岡歯科大学総合歯科学講座 訪問歯科センター)

【目的】
 誤嚥性肺炎リスクの高い患者の口腔管理は歯科医療従事者と多職種,特に介護士との連携が重要である。我々は3年前より介護士の口腔管理に対する知識と技術の向上を目的に月1回の口腔セミナーを実施し,誤嚥性肺炎リスクの高い患者には,歯科医療従事者による週1回の口腔衛生管理と,介護士による毎日の口腔ケアの両輪で口腔管理を行ってきた。しかし, COVID-19感染拡大により3月から6月まで3か月間口腔衛生管理が中断し,介護士による毎日の口腔ケアのみになったため,口腔環境の悪化が危惧された。そこで,介護士の口腔管理に対するモチベーションを維持するために口腔セミナーはリモートにより継続した。今回,口腔衛生管理中断中も介護士による口腔ケアで口腔環境を維持した2例を経験できたので報告する。

【症例の概要と処置】
 症例1は90歳,男性。既往歴はアルツハイマー型認知症,呼吸器系疾患があり,寝たきり度はC2,経鼻経管栄養で要介護度5であった。開口拒否などの口腔ケアへの抵抗があり,漿液性唾液が多く頻繁に唾液の咽頭残留を認める誤嚥リスクの高い症例であった。そのため,介護士には吸引機を用いるなどの唾液貯留に配慮した口腔ケアを指示していた。
 症例2は89歳,男性。既往歴として脳梗塞,呼吸器系疾患,心疾患があり,寝たきり度はC2,経鼻経管栄養で要介護度5であった。口腔乾燥があり口蓋や舌には剥離上皮の付着を認めるため,保湿剤の塗布は必須であるため,介護士による口腔ケアに際しては保湿に重点を置くよう指示をしていた。

【結果と考察】
 Oral Health Assessment Tool(OHAT)により口腔環境を評価すると,口腔衛生管理中断前の症例1の合計点は5点,再開後は4点であった。症例2の中断前は7点,再開後は4点であった。両症例とも介護士による口腔ケアにより口腔衛生管理中断中も口腔環境が維持されていたと考えられる。また,全身的にも大きな変化はなく,健康状態も維持できていた。
誤嚥性肺炎リスクの高い患者の口腔環境を維持できたのは,介護士の口腔ケアに対する知識と技術はもとより,月1回の口腔セミナーをリモートに切り替え介護士のモチベーションを維持できたことが要因であると考えられる。
 本症例より,介護士など多職種の口腔管理に対する知識と技術,モチベーションの維持にはリモートの活用は有用であることが示唆された。