一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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地域歯科医療部門

2021年6月12日(土) 10:10 〜 11:10 Line B (ライブ配信)

[優秀P地域-04] 回復期病棟入院高齢者における口腔健康状態不良と食欲低下の関連性

○野本 亜希子1,2、大野 友久1、橋詰 桃代1、波多野 真智子1、戸原 玄2 (1. 浜松市リハビリテーション病院、2. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
高齢者の食欲低下(Anorexia of aging; AA)は死亡率等と関連する重要な問題であるが,総合的な口腔健康状態とAAの関連性を調査した報告はない.本研究は回復期病棟入院高齢者を対象に口腔健康状態とAAの関連性を明らかにすることを目的とした.
【方法】
2019.12~2020.4の回復期病棟入院患者(65歳以上)を対象にした横断研究.Mini-Mental State Examination(MMSE)<18点の患者は除外した.口腔健康状態はOral Health Assessment Tool (OHAT-J)で評価し,合計点3点以上を口腔健康状態不良と定義した.食欲はSimplified Nutrition Appetite Questionnaire-Japanese Elderly (SNAQ-JE)で評価し,14点以下はAAと定義した.年齢,性別,体重,身長,原疾患,併存疾患,握力,四肢骨格筋量(skeletal muscle mass index ; SMI),日常生活動作(Functional Independence Measure; FIM),嚥下機能(Food Intake LEVEL Scale; FILS),MMSE,栄養状態(Global Leadership Initiative Malnutrition; GLIM)を評価し,AAの有無での比較を行い,さらにAAを従属変数とし多変量解析を実施した.OHAT-Jサブ項目でも多変量解析を行った.
(浜松市リハビリテーション病院倫審査委員会承認番号:19-50)(COI開示:なし)
【結果】
160人が対象となった.AAの有病率は53.8%であった.AA群では非AA群と比較し,口腔健康状態不良(65.1% vs 39.2%)と低栄養(70.9% vs 37.8%)の割合が有意に高かった.またAA群ではMMSE,FIM,握力,SMI,FILSが有意に低かった.多変量解析では口腔健康状態不良(odds比:OR: 2.634)と低栄養(OR: 2.671)がAAと関連していた.サブ解析では義歯(OR: 2.610),口腔清掃状態(OR: 3.041)がAAと関連していた.
【結論】
総合的な口腔健康状態不良は回復期病棟入院高齢者のAAと有意に関連していた.本研究から義歯や口腔清掃状態を含めた総合的な口腔健康状態の改善は食欲向上に必要であることが示唆された.