The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

優秀ポスター

Live配信抄録 » 優秀ポスター

歯科衛生士部門

Sat. Jun 12, 2021 11:20 AM - 12:20 PM Line B (ライブ配信)

[優秀P衛生-04] 自立高齢者における口腔機能低下症と咀嚼行動:パイロットスタディ

○畑山 千賀子1,2、堀 一浩1、泉野 裕美2、福田 昌代3、澤田 美佐緒3、氏橋 貴子1,3、小野 高裕1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野、2. 梅花女子大学看護保健学部口腔保健学科、3. 神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科)

【目的】
 咀嚼機能等の口腔機能低下(口腔機能低下症)は,摂取可能な食物の多様性低下,食事量の減少を引きこし,栄養摂取に影響を与えると考えられている。しかしながら,咀嚼回数をはじめとする咀嚼行動と口腔機能低下症との関連を調査した報告はほとんど見られない。そこで本研究では,地域在住の高齢者を対象に,口腔機能と咀嚼行動との関連について検討した。
【方法】
 対象は,M市在住の地域在住自立高齢者77名(男性28名,女性49名,平均年齢74.2±6.1歳)とした。各対象者に対し,口腔機能低下症に関する7項目(口腔不潔,口腔乾燥,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を検査した。さらに,おにぎり1個(100g)を全量摂取させ,シャープ社製bitescanを用いて咀嚼行動(咀嚼回数,一口当たり咀嚼回数,咀嚼テンポ,咀嚼時間)を計測した。口腔機能低下症の診断基準,および口腔機能低下症の各項目の評価基準により対象者を2群に分け,咀嚼行動を比較した。統計解析にはMann-Whitney U検定を用いた。本研究は,新潟大学倫理委員会の承認(2018-0107)を受けた。
【結果】
 口腔機能低下症該当群(n=58)は,非該当群と比べて有意に咀嚼テンポが遅かったが(P=0.045),咀嚼回数には違いを認めなかった(P=0.958)。評価項目別では,舌口唇運動機能低下該当群は,非該当群と比べて有意に咀嚼テンポが遅かった(P=0.007)。また,口腔不潔該当群は,非該当群と比較して有意に咀嚼回数は多く(P=0.037),咀嚼時間が長かった(P=0.030)。また,有意ではないものの,咀嚼機能低下該当群は, 非該当群と比べて,一口当たりの咀嚼回数が少なく(P=0.161),咀嚼テンポが遅い(P=0.069)傾向があった。以上より, 高齢者において口腔機能や咀嚼機能の低下が認められても,代償的に咀嚼回数の増加は認められず,窒息の危険性や栄養吸収に影響を与える可能性が示唆された。また,口腔健康への関心が低く,口腔清掃状態が悪い場合には咀嚼行動も不活発であること,舌機能の低下や咀嚼機能の低下によりリズミカルな咀嚼ができなくなっていることなどが示された。
(COI開示:申告すべき企業はない)