一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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課題口演2
口腔機能低下症

2021年6月13日(日) 10:20 〜 11:35 Line A (ライブ配信)

[課題2-2] 3年間の縦断研究による口腔機能の加齢による影響の検討

○室谷 有紀1、八田 昂大1、三原 佑介1、福武 元良1、佐藤 仁美1、萩野 弘将1、東 孝太郎1、高橋 利士1、松田 謙一1、前田 芳信1、池邉 一典1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野)

【目的】

平成30年度の歯科診療報酬改定で口腔機能低下症に対する口腔機能管理が保険収載され,口腔機能を維持することの重要性が高まっている。しかし個人の口腔機能は,年齢とともに低下するのか,性別によって低下に差があるのかは明らかになっていない。そこで本研究は,高齢者を対象に3年間の縦断研究を行い,咬合力ならびに舌圧に対する,性別,年齢,加齢,歯数の影響を検討することを目的とした。



【方法】

本研究は,2013年から2016年の会場調査に参加した自立した地域在住高齢者1701名(74-78歳群656名,82-85歳群706名,89-95歳群339名)のうち,3年後の追跡調査に参加し,かつ評価項目のデータがすべて揃っている者951名(74-78歳群466名,82-85歳群391名,89-95歳群94名)を解析の対象とした。口腔内検査により残存歯数を記録した。咬合力の測定には,デンタルプレスケール50H,Rタイプ(ジーシー社,東京)を用いた。また,舌圧の測定にはJMS舌圧測定器(ジェイ・エム・エス社,広島)を用いた。なお,義歯を使用している者は義歯装着状態で測定を行った。統計学的分析には,咬合力と舌圧それぞれを目的変数とし,性別,年齢群,時間経過,残存歯数を説明変数とした一般化線形混合モデル(GLMM)を用いた。有意水準は5%とした。



【結果と考察】

GLMMの結果,咬合力に対して,性別(参照:男性,女性:非標準化係数(B)= -66.9,p<0.001),年齢群(参照:74-78歳群,82-85歳群:B= -81.7,p<0.001,89-95歳群:B= -87.2,p<0.001)および残存歯数(B=13.8,p<0.001)が有意な変数となったが,時間経過は有意な変数とならなかった。舌圧は,性別(参照:男性,女性:B= -0.94,p= 0.034)および年齢群(参照:74-78歳群,82-85歳群:B= -1.78,p<0.001,89-95歳群:B= -5.47,p<0.001),時間経過(B= -0.82,p<0.001)が有意な変数となったが,残存歯数は有意な変数とならなかった。本研究の結果より,咬合力は加齢による影響が少なく,舌圧は加齢による影響を受けやすい可能性が示された。

(大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号H27-E4)