The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演)

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一般口演3
加齢変化・基礎研究、全身管理・全身疾患、実態調査

Sun. Jun 13, 2021 9:50 AM - 10:50 AM Line B (ライブ配信)

座長:貴島 真佐子(わかくさ竜間リハビリテーション病院)、片倉 朗(東京歯科大学 口腔病態外科学講座)

[O3-4] 上顎歯肉の腫脹を契機に発見され、急速な致死的転帰をたどったメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の一例

○河合 絢1、森 美由紀1、別府 大嘉繁1、齊藤 美香1、大鶴 洋1,2、織田 麻琴3、相田 順子3、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科、2. 東京都、3. 東京都健康長寿医療センター研究所老年病理学研究チーム)

【目的】

メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ(RA)の標準治療薬である。MTX投与中の患者に生じるリンパ増殖性疾患をMTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)という。WHOの報告によるとMTX-LPDはMTXの中止により約30%の症例が寛解する。一方、RA患者の約10%に間質性肺炎(IP)が合併するとされ、合併症はRA患者の予後規定因子である。今回、上顎歯肉の腫脹を契機にMTX-LPDと診断され、MTX休薬により腫瘤は縮小したものの、IPを併発し急速に致死的転帰をたどった症例を経験したので報告する。

【症例の概要と処置】

症例:76歳、女性。主訴:左側上顎前歯部の歯肉腫脹。既往歴:RA(60歳発症、61歳からMTX:4~6mg/週)。現病歴:20XX年9月上旬に左側上顎中切歯・側切歯の歯肉腫脹を自覚した。精査・加療を目的に10月YY日(第1病日)当科受診した。現症:左側上顎中切歯・側切歯歯頚部に弾性硬、易出血性の歯肉腫瘤を認めた。血液生化学検査所見:赤血球数(3.24×106/㎕)、Hb(9.9mg/㎗)とやや低値、LDH (223U/L)および可溶性IL-2レセプター(4610U/㎖)の高値を認めた。歯肉生検病理所見:粘膜上皮下に中~大型の異型リンパ球様浸潤を認めた。免疫染色ではCD20、CD79a、EBER陽性で、病理診断はEBV-陽性diffuse large B-cell lymphomaであった。臨床診断:MTX-LPD。経過:リウマチ内科医と協議し第16病日にMTXを中止後、当院血液内科医へ診察を依頼した。第23病日のPET-CTでは、全身の骨・脾臓・リンパ節に集積を認めた。両肺のすりガラス状の集積増加はRAと関連したIPと診断された。第26病日に呼吸苦及び体動困難を生じ、当院緊急入院、ステロイドパルス療法を開始した。第28病日、気管内挿管を施行した。上顎前歯部歯肉の腫瘤は消失した。第50病日、気管切開をしたものの呼吸状態は改善せず、第57病日に死亡した。剖検時、全身のリンパ節の腫大は認めず、直接的死因はIPであった。

【結果と考察】

本症例ではMTX休薬後MTX-LPDは縮小したが、呼吸状態が悪化し死亡した。口腔領域に発症したMTX-LPDにおいてもIP等を併発する可能性を考慮し、リウマチ科医や該当科医と連携して迅速な治療を進める必要がある。
(COI開示:なし)