[SSY-5] 口腔と長寿の文献レヴュー:健康長寿社会の実現を目指す戦略を支える歯科的エビデンスの充実に向けて
![](https://confit-sfs.atlas.jp/customer/gero32/SSY-05.png)
2006年 3月 北海道大学歯学部歯学科卒業
2007年 3月 新潟大学医歯学総合病院歯科医師臨床研修課程修了
2008年 11月 アメリカ・ミシガン大学客員研究員
2010年 3月 新潟大学医歯学総合研究科(口腔生命科学専攻)博士課程修了
2010年 4月 新潟大学医歯学総合病院医員
2010年 6月 新潟大学医歯学総合病院助教
2014年 10月 九州歯科大学准教授
2020年 3月 東京都健康長寿医療センター研究所専門副部長(現在まで)
2020年 4月 九州歯科大学客員教授(現在まで)
口腔の健康と健康長寿をつなぐメカニズムには、栄養、運動、喫煙などの保健行動、社会性、そして全身疾患などが複雑に関連している。
口腔の健康の度合いを把握する疫学的指標として最も広く用いられているのは歯数である。歯数と全身の健康の関連についてはこれまでに多くの研究が実施され、認知症、がん、心血管疾患、脳卒中、死亡に関しては複数のコホート研究を集めたメタアナリシスにより、その関連が立証されている。歯数を明確な目標に定めた「8020運動」は最も成功した国民運動のひとつと評価されている。日本人の歯数は着実に増加し、平成28年歯科疾患実態調査結果では8020達成者の割合(75歳以上85歳未満の8020達成者の割合から推計値)が51.2%であることが公表された。
歯数は客観的で、誰もが理解しやすい指標であるが、これのみで口腔の健康を正しく評価できるわけではない。歯数と全身の健康は直接に結びつくのではなく、その経路の途中には口腔の機能が存在する。
高齢期の口腔の機能低下に対して口腔機能低下症が保険の病名として認められ、またオーラルフレイルという概念が国民への口腔の機能の重要性の啓発に用いられるようになった昨今、口腔の機能と栄養、運動、そして全身の健康との関連についての優れた知見が日本の研究者を中心に生み出されている。口腔の機能の観点から健康長寿社会の実現を目指す新たな戦略の立案には確かなエビデンスが必要であり、この分野の研究はさらに盛んになっていくと推測される。
今回は、口腔の機能、そしてそれを支える歯と歯肉の健康が健康長寿に与える影響に関する疫学研究に焦点をあて、①これまでに得られた知見の整理を行い、②データ整備・活用の新たな可能性や方向性について考察し、③今後求められている研究デザインについて、データ取得の方法や解析の方法について意見を述べる。あわせて、①ライフステージを横断しての口腔の機能の変化に関して、②口腔の機能の格差の存在に関して、そして、③定期的な歯科受診によって得られる利益に関しても考察を加えてみたいと考えている。
口腔の健康の度合いを把握する疫学的指標として最も広く用いられているのは歯数である。歯数と全身の健康の関連についてはこれまでに多くの研究が実施され、認知症、がん、心血管疾患、脳卒中、死亡に関しては複数のコホート研究を集めたメタアナリシスにより、その関連が立証されている。歯数を明確な目標に定めた「8020運動」は最も成功した国民運動のひとつと評価されている。日本人の歯数は着実に増加し、平成28年歯科疾患実態調査結果では8020達成者の割合(75歳以上85歳未満の8020達成者の割合から推計値)が51.2%であることが公表された。
歯数は客観的で、誰もが理解しやすい指標であるが、これのみで口腔の健康を正しく評価できるわけではない。歯数と全身の健康は直接に結びつくのではなく、その経路の途中には口腔の機能が存在する。
高齢期の口腔の機能低下に対して口腔機能低下症が保険の病名として認められ、またオーラルフレイルという概念が国民への口腔の機能の重要性の啓発に用いられるようになった昨今、口腔の機能と栄養、運動、そして全身の健康との関連についての優れた知見が日本の研究者を中心に生み出されている。口腔の機能の観点から健康長寿社会の実現を目指す新たな戦略の立案には確かなエビデンスが必要であり、この分野の研究はさらに盛んになっていくと推測される。
今回は、口腔の機能、そしてそれを支える歯と歯肉の健康が健康長寿に与える影響に関する疫学研究に焦点をあて、①これまでに得られた知見の整理を行い、②データ整備・活用の新たな可能性や方向性について考察し、③今後求められている研究デザインについて、データ取得の方法や解析の方法について意見を述べる。あわせて、①ライフステージを横断しての口腔の機能の変化に関して、②口腔の機能の格差の存在に関して、そして、③定期的な歯科受診によって得られる利益に関しても考察を加えてみたいと考えている。