[認定P-08] 高齢重症筋無力症患者の嚥下障害に対し,全身状態に応じて摂食機能訓練と食形態調整を行なった一例
【目的】
抗AChR抗体陽性重症筋無力症高齢患者(MG)の嚥下障害に対し,全身状態に応じて摂食機能訓練および食形態の調整を行った一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
79歳,女性。2021年2月,飲み込みづらさを主訴に来院した。同時期に抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体14.0 nmol/lで全身型MGと診断された。他の既往歴は食道アカラシア。眼瞼下垂,複視があり,開鼻声を認めた。上下顎部分床義歯を装着しているが,咬合に問題はなかった。BMI:24.2,Alb:4.5であった。
嚥下造影検査(VF)では嚥下反射の惹起は遅れ,うすいとろみ水で一部喉頭侵入がみられた。中等度の咽頭残留が生じ,食道の逆流所見を認めた。舌圧は10.3 kPaであった。以上より,食事は嚥下調整食2-1(学会分類で記載), 水分にはうすいとろみを付与,食後30分は横にならないように指導した。翌日より言語聴覚士(ST)による摂食機能訓練を開始し,左梨状窩の残渣に対し,左回旋嚥下を指導した。その後,血漿交換療法や免疫グロブリン療法が施行された。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
1ヶ月後,VF再検査を施行した。検査中明らかな喉頭侵入・誤嚥所見はなかったが,食道の逆流を認めた。少量の咽頭残留が生じるが,残留物は追加嚥下にて通過した。顎引き嚥下が有効であった。舌圧は20.6 kPaに改善した。以上より,食事は嚥下調整食4(学会分類で記載)へアップとし,さらに2週間後,常食摂取とした。BMI:23.6,抗AChR抗体は6.7 nmol/lであった。
MGは嚥下障害や構音障害を発症することがあり,症状の日内変動や,日差変動もみられるため,症状の変動,治療やリハビリテーションの経過に応じて嚥下機能を再評価し,食形態を調整することが必要となる。血漿交換療法や免疫グロブリン療法の経過については脳神経内科主治医と,嚥下訓練の経過についてはリハビリテーション部STと情報交換を行った。本症例では,他職種と連携し,全身状態に応じた摂食機能訓練と食形態調整を行い, 最終的には常食摂取に戻すことができた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
抗AChR抗体陽性重症筋無力症高齢患者(MG)の嚥下障害に対し,全身状態に応じて摂食機能訓練および食形態の調整を行った一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
79歳,女性。2021年2月,飲み込みづらさを主訴に来院した。同時期に抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体14.0 nmol/lで全身型MGと診断された。他の既往歴は食道アカラシア。眼瞼下垂,複視があり,開鼻声を認めた。上下顎部分床義歯を装着しているが,咬合に問題はなかった。BMI:24.2,Alb:4.5であった。
嚥下造影検査(VF)では嚥下反射の惹起は遅れ,うすいとろみ水で一部喉頭侵入がみられた。中等度の咽頭残留が生じ,食道の逆流所見を認めた。舌圧は10.3 kPaであった。以上より,食事は嚥下調整食2-1(学会分類で記載), 水分にはうすいとろみを付与,食後30分は横にならないように指導した。翌日より言語聴覚士(ST)による摂食機能訓練を開始し,左梨状窩の残渣に対し,左回旋嚥下を指導した。その後,血漿交換療法や免疫グロブリン療法が施行された。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
1ヶ月後,VF再検査を施行した。検査中明らかな喉頭侵入・誤嚥所見はなかったが,食道の逆流を認めた。少量の咽頭残留が生じるが,残留物は追加嚥下にて通過した。顎引き嚥下が有効であった。舌圧は20.6 kPaに改善した。以上より,食事は嚥下調整食4(学会分類で記載)へアップとし,さらに2週間後,常食摂取とした。BMI:23.6,抗AChR抗体は6.7 nmol/lであった。
MGは嚥下障害や構音障害を発症することがあり,症状の日内変動や,日差変動もみられるため,症状の変動,治療やリハビリテーションの経過に応じて嚥下機能を再評価し,食形態を調整することが必要となる。血漿交換療法や免疫グロブリン療法の経過については脳神経内科主治医と,嚥下訓練の経過についてはリハビリテーション部STと情報交換を行った。本症例では,他職種と連携し,全身状態に応じた摂食機能訓練と食形態調整を行い, 最終的には常食摂取に戻すことができた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)