The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター2

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター2 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-09] パーキンソン病を有し,摂食嚥下障害のある高齢者に義歯治療と摂食機能療法を実施した1症例

○本釜 聖子1、市川 哲雄2 (1. 愛媛大学医学部附属病院 歯科口腔外科・矯正歯科、2. 徳島大学大学院医歯薬学研究部 口腔顎顔面補綴学分野)

【緒言】
パーキンソン病(PaD)は,摂食嚥下障害の自覚に乏しく,不顕性誤嚥も少なくない。全身の筋の強剛や無動・ 寡動により運動開始の遅れ,協調性運動・嚥下反射も低下する。PaDを有し,摂食嚥下障害のある高齢患者に義歯治療と摂食機能療法を実施し,良好な結果が得られたので報告する。

【症例】
78 歳,男性。咀嚼・発音障害とムセを主訴に来院した。PaDを有し,誤嚥性肺炎にて入退院を繰り返していた。 残存歯は1┘└346で,上顎部分床義歯(PD),下顎全部床義歯(CD)が装着されていた。義歯は度重なる破損・修理で劣化し,人工歯の咬耗により咬合高径の低下を認め,舌の動かしにくさを感じていた。口腔機能検査値は,口腔湿潤度以外の項目で低値を示した。さらに,嚥下内視鏡検査(VE)で咳反射・嚥下反射惹起の低下を認めた。診察・検査の結果からPD/CD不適合およびPaDによる咀嚼・発音・嚥下障害,口腔機能低下症と診断した。舌可動域制限はなく,咬合高径の低下が咀嚼能力低下,食塊形成のしにくさの第一原因と判断し,PaD等による口腔機能低下が発音・摂食嚥下障害に繋がっていると考えた。このため咬合高径の挙上,義歯の維持安定と咬合関係を改善した義歯治療と摂食機能療法を計画した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【経過】
義歯は通法に従って製作し,咬合高径は前歯部で5mmの挙上となった。摂食機能療法は,shaker訓練等を含めた内容を週1回実施し,自宅でも行うよう指導した。その結果,口腔機能検査値は改善を認めた。VEにて嚥下機能の改善はないものの,服薬状況確認と食姿勢の改善,ムセ時の対応が可能になり,誤嚥性肺炎の発症はなくなり, 経過良好である。PaDの進行状況を把握しながら,定期的な口腔管理と摂食機能療法を継続している。

【考察】
今回,義歯治療と摂食機能療法を並行して行い,PaDの特徴を理解し,咀嚼・発音・嚥下障害に対して総合的にアプローチを行った。これによって,口腔機能が改善,QOL が向上し,誤嚥性肺炎予防につながったと考えられる。PaDは緩徐進行性の神経変性疾患である。今後も長期経過をたどる廃用症候群への介入が必要であり,神経内科主治医らと連携を継続しながら,義歯・口腔機能管理,摂食機能療法の継続が機能低下防止につながると考えている。(COI:開示なし)(倫理審査対象外)