The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター2

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター2 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-10] 加齢症状と説明されていたが病的な筋力低下を示し封入体筋炎が疑われた嚥下障害患者の1例

○安井 由紗佳1,2、野原 幹司2 (1. 医療法人 村内歯科医院、2. 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部)

【目的】
一般に高齢者は加齢により筋肉量の減少,筋力低下を認めやすいと言われている。筋力低下は摂食嚥下障害を引き起こすが,筋力低下となる原因は様々である。今回,筋力低下の診査・評価が加齢にマスキングされ不十分となっていたものの,問診や嚥下所見,血液検査から病的な筋力低下を疑い,脳神経内科に対診した結果,封入体筋炎が疑われた症例を経験したので以下に報告する。
【症例の概要と処置】
74歳男性。BMI:20.2で既往歴は高血圧のみ,ADLは自立されていた。普通食を全量摂取しているものの,数年前からの食事時の鼻腔逆流や残留感,食事時間の延長を主訴として家族の促しにより受診された。問診時,開鼻声を認め,缶のタブが開けにくいなど手指の運動機能低下を疑う症状を聴取した。握力を測定し,右10kg,左7kg(平均値は37.36kg)であった。口腔内診査時は舌の萎縮,線維束性筋萎縮を認めなかった。嚥下内視鏡検査(VE)では,安静時の咽頭腔に唾液貯留が見られ,発音時には軽度の鼻咽腔閉鎖機能不全を認めた。摂取時は, 嚥下反射良好で誤嚥や鼻腔逆流を認めなかったものの,著明な咽頭残留が見られた。病的な筋力低下を疑って血液検査を実施し,CK:396,LD:230,ALP:330を認めたため,脳神経内科に対診した結果,封入体筋炎疑い(病理検査を本人が辞退し,確定診断には至らず)であった。これに対して,適した食形態と交互嚥下を指導し, 栄養剤を併用することで食事負担の軽減をはかった。現在まで食事量,体重を維持している。また,握力の低下など緩徐ながら筋力低下の進行がみられるため,医科や介護と情報共有し,介護認定の調整も含めた患者支援を行っている。
なお,本報告の発表において患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
問診,握力検査,VE評価,血液検査から病的な筋力低下を疑ったため,脳神経内科に対診した結果,封入体筋炎の疑いが認められた。一方,他院では本患者の不調は加齢症状と説明を受けていた。高齢者の筋力低下を認めた際に単純に加齢症状で片付けることなく,筋力低下の診査を十分に行う重要性が示唆された。また,筋力低下に対してはむやみにリハビリを勧めることなく,原因を推察し,問診時に筋疾患も疑われた際には可及的早期に適切な医療機関の受診を促すことが必要と考えられた。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)