一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター2

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター2 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-12] 中咽頭癌治療後による嚥下障害患者に対し嚥下リハビリテーションの教育入院を行い全量経口摂取に至った1例

○野口 毅、髙橋 浩二 (昭和大学歯科病院口腔リハビリテーション科)

【緒言】
頭頸部癌治療後の患者は嚥下機能障害をきたし,機能回復にあたり嚥下リハビリテーション(以下,嚥下リハ)の介入が必要となることが少なくない。当科では訓練手技を短期間に正確な方法で習得することを目的とし, 入院下での集中的な嚥下リハを実施している。今回,経口摂取困難と判断され,経管栄養の中咽頭癌治療後患者で集中的な嚥下リハの教育入院により,全量経口摂取可能となり経鼻胃管抜去をし得た症例を経験したので報告する。

【症例】
65歳の女性。2007年5月,A病院にて中咽頭癌(T4aN2bM0)に対し舌亜全摘出術,両側頸部郭清術(右Ⅰ-Ⅴ,左Ⅰ-Ⅲ),気管切開術,腹直筋皮弁による再建術が施行された。2015年7月,中咽頭に再発を認め,セツキシマブ併用放射線療法(RT66Gy/33Fr,セツキシマブ7回投与)が施行された。2021年6月,経口摂取および自力歩行が困難となり救急搬送され,低Na血症・脱水の診断の下,同病院にて入院加療を受け,経鼻胃管が挿入された。その後,経口摂取が困難であったため,胃瘻造設を提案されるも本人の経口摂取の希望が強く,嚥下リハ目的のため2021年7月当科に転院となった。既往に高血圧症がある。なお,本報告の発表は患者本人から文章による同意を得ている。

【経過】
入院時,外科侵襲後の瘢痕拘縮による頸部可動域と舌可動域の低下を認めたため,頸部ストレッチおよび舌可動域拡大訓練を指導した。また,VF検査より右傾斜左回旋姿勢にて全粥で顕性誤嚥を認め,前傾姿勢での排出により排出可能であることを確認した。本検査結果を踏まえ,当科スタッフの監視下で,3食/日の直接訓練を右傾斜左回旋姿勢にて実施し,一口の嚥下ごとに排出するよう指導した。なお訓練実施に先立ち,高血圧症については当院の内科医師の診察を受け,血圧をモニターしながら訓練を行う助言を得た。入院後短期間に全量経口摂取可能となり,経鼻胃管を抜去し,訓練手技も獲得され,4日後に退院した。その後,現在に至るまで発熱や誤嚥性肺炎の発症は認めていない。

【考察】
本症例では,入院時のVF検査で安全な経口摂取姿勢を右傾斜左回旋とし,顕性誤嚥と排出手技による誤嚥物の排出を確認した。以上の結果を下に,直接訓練時に患者が姿勢調整と排出を遵守することを摺り込み,早期の全量経口摂取が得られたと考えられた。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)