[認定P-15] 経口摂取困難な脳梗塞発症患者への嚥下評価と訓練により,嚥下機能及び覚醒度や全身状態が改善された症例
【緒言】
我々は,経口摂取困難である脳梗塞発症後の患者に適切な嚥下機能評価と段階的経口摂取訓練,全身訓練を行い, 嚥下機能だけでなく覚醒度や全身状態も改善された一例を経験したので報告する。
【症例】
84歳女性,脳梗塞後遺症による嚥下障害のため入院後,経口摂取困難となり胃瘻を造設。退院後,口から食べたいを主訴に当科の訪問診療を開始した。義歯不使用,右麻痺や高次機能障害,低栄養や筋力低下を認め,傾眠傾向強く活動性は低下していた。身の回りの介護は長女が行っており,その他デイサービス通所,訪問リハビリ, 訪問看護の介入があった。嚥下内視鏡検査(VE)では咽頭に唾液貯留,披裂部から唾液の喉頭流入,唾液やとろみ水による不顕性誤嚥を認めた。なお,本報告の発表について患者代諾者から文書による同意を得ている。
【経過】
長女の経口摂取再開希望より,お楽しみレベルでの経口摂取を目指し,当科での摂食嚥下リハビリテーションを開始した。退院時嚥下機能評価は,ギャッジアップ45度で濃いとろみ水スプーン1杯のみ摂取可能であった。退院後1ヶ月のVEは中間とろみ水で嚥下反射遅延による不顕性誤嚥や被裂部から唾液の垂れ込み誤嚥が見られた。覚醒状態JCS II桁の状態で,間接訓練で1ヶ月経過観察とした。退院2ヶ月後,挺舌量や舌可動域,喀出力も上がり濃いとろみ水での直接訓練を開始した。全身訓練も開始継続し,退院6ヶ月後には訓練前後の吸引と共にゼリー での直接訓練が可能になった。食形態向上に合わせ義歯を訪問歯科に作成依頼,使用を徐々に開始した。退院7ヶ月後には覚醒状態も JCS I桁で安定笑顔も見られ,義歯やスプーンを使用し介助ありで摂食可能,退院10ヶ月後には咀嚼訓練を始め咀嚼嚥下できる様になった。
【考察】
本症例は経口摂取不可だったが,当科の嚥下機能評価後,段階的経口訓練により,義歯やスプーン使用しお楽しみレベルでの経口摂取が可能となった。間接訓練にて舌骨上筋群や喀出力が向上,直接訓練の継続や義歯使用により舌の動きや咀嚼能力,口腔感覚も賦活化できたと考えられる。嚥下機能向上に伴い,覚醒状態 が JCS I桁で安定,患者の感情面も同時に改善が認められた。経口摂取支援は嚥下機能面だけでなく,患者の全身状態や精神面にも影響を及ぼすと考察された。
(COI 開示:なし) (倫理審査対象外)
我々は,経口摂取困難である脳梗塞発症後の患者に適切な嚥下機能評価と段階的経口摂取訓練,全身訓練を行い, 嚥下機能だけでなく覚醒度や全身状態も改善された一例を経験したので報告する。
【症例】
84歳女性,脳梗塞後遺症による嚥下障害のため入院後,経口摂取困難となり胃瘻を造設。退院後,口から食べたいを主訴に当科の訪問診療を開始した。義歯不使用,右麻痺や高次機能障害,低栄養や筋力低下を認め,傾眠傾向強く活動性は低下していた。身の回りの介護は長女が行っており,その他デイサービス通所,訪問リハビリ, 訪問看護の介入があった。嚥下内視鏡検査(VE)では咽頭に唾液貯留,披裂部から唾液の喉頭流入,唾液やとろみ水による不顕性誤嚥を認めた。なお,本報告の発表について患者代諾者から文書による同意を得ている。
【経過】
長女の経口摂取再開希望より,お楽しみレベルでの経口摂取を目指し,当科での摂食嚥下リハビリテーションを開始した。退院時嚥下機能評価は,ギャッジアップ45度で濃いとろみ水スプーン1杯のみ摂取可能であった。退院後1ヶ月のVEは中間とろみ水で嚥下反射遅延による不顕性誤嚥や被裂部から唾液の垂れ込み誤嚥が見られた。覚醒状態JCS II桁の状態で,間接訓練で1ヶ月経過観察とした。退院2ヶ月後,挺舌量や舌可動域,喀出力も上がり濃いとろみ水での直接訓練を開始した。全身訓練も開始継続し,退院6ヶ月後には訓練前後の吸引と共にゼリー での直接訓練が可能になった。食形態向上に合わせ義歯を訪問歯科に作成依頼,使用を徐々に開始した。退院7ヶ月後には覚醒状態も JCS I桁で安定笑顔も見られ,義歯やスプーンを使用し介助ありで摂食可能,退院10ヶ月後には咀嚼訓練を始め咀嚼嚥下できる様になった。
【考察】
本症例は経口摂取不可だったが,当科の嚥下機能評価後,段階的経口訓練により,義歯やスプーン使用しお楽しみレベルでの経口摂取が可能となった。間接訓練にて舌骨上筋群や喀出力が向上,直接訓練の継続や義歯使用により舌の動きや咀嚼能力,口腔感覚も賦活化できたと考えられる。嚥下機能向上に伴い,覚醒状態 が JCS I桁で安定,患者の感情面も同時に改善が認められた。経口摂取支援は嚥下機能面だけでなく,患者の全身状態や精神面にも影響を及ぼすと考察された。
(COI 開示:なし) (倫理審査対象外)