一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター4

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター4 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-20] 口腔衛生・機能管理を行うことで初めての義歯を装着することができた要介護超高齢者の一例

○三浦 康寛1、野原 幹司2 (1. なかたに歯科クリニック、2. 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能治療学教室)

【緒言】
歯科治療の主である咀嚼障害の改善の為には器質的な機能回復を行うが、老化や疾患による運動機能低下がある者には口腔運動の機能回復を並行して行わなければ摂食機能の改善には至りにくい。今回、要介護超高齢者である95歳の患者で初めて義歯を使用する症例を経験した。廃用による運動障害に対して口腔衛生・機能管理を行いながら義歯を使用し、摂食機能の改善に至った一例を経験したので報告する。
【症例】
主訴は歯が折れて舌に当たり痛みがある。既往歴は心筋梗塞、誤嚥性肺炎、前立腺肥大症にて内服加療中、下肢の廃用性萎縮にて外出は困難な状態であった。体格はやせ、姿勢傾斜はなし。湿性嗄声あり会話は聞き取りにくいが、明らかな認知機能の低下はなし。口腔内は残存歯多くあるが、う蝕進行にて破折歯、残根歯を多く認めた。 口腔清掃状態は悪く、歯肉炎症、出血を認めた。頬や口唇、舌運動は良好であったが巧緻性は低値であった。 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
訪問にて歯科治療を行っていくと、患者より義歯製作の希望があった。残存歯は咬耗が進んでおり、咬合高径は低位になっていたが、口腔機能低下を考慮し、咬合高径を変えないように製作した。口腔健康管理にて口腔の清掃性は向上し、継続した訓練にて口腔機能の改善を認めた。初めは義歯装着できる時間が限られていたが、徐々 に装着時間は長くなってきた。食事形態は変わらないが、摂取量の増加を認めた。誤嚥性肺炎など体調不良なく過ごされている。
オーラルデキアドコキネシス:2019.7 (2.0 2.2 1.6)2020.3 (3.0 3.0 2.4) 舌圧値:2019.7 (22.5)2020.3 (23.6)
【考察】
咀嚼機能障害には器質性咀嚼障害と運動障害性咀嚼障害がある。器質性だけの障害であれば歯科治療にて機能回復は達成されるが、疾患や老化による運動障害がある場合は補綴処置だけでは機能回復とは言えない。本症例では口腔機能低下を認めたが、疾患による機能低下ではなかった事、認知機能の低下がなく訓練の指示が入った事、 なにより患者の希望が強かった事により口腔衛生・機能管理が継続でき、口腔機能の改善を達成できた。義歯製作などの器質的な機能回復のみならず、口腔機能低下に気付き、機能訓練を並行して行っていくことが重要である。

(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)