一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター4

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター4 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-22] 口腔癌に起因する開口障害に対して,口腔機能リハビリテーションを行い,新義歯を製作した症例

○西尾 健介1,2、伊藤 智加1,2 (1. 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座、2. 日本大学歯学部付属歯科病院 総義歯補綴科)

【緒言】
 口腔癌の後遺症により,新義歯製作が困難な場面は少なくない。今回,口腔癌の後遺症で開口量が著しく低下した患者に対し,義歯製作時に,口腔機能リハビリテーションを実施し良好な結果が得られたので報告する。
【症例】
 64歳女性。義歯が合わず食事が取りにくいことを主訴に来院。30年前に下顎歯肉癌にて右側下顎骨区域切除・ 顎骨再建を行っている。下顎は無歯顎であり高度顎堤吸収を呈している。身長は148cm,体重は40kg,BMIは18.3であり痩せ型の体型である。上顎は11,21,27が義歯支台歯として残存している。上下共に義歯が装着されているが不適合であり,咀嚼機能は80mg/dlであった。患者は手術の影響で口腔周囲・口唇・頬粘膜の瘢痕収縮が顕著で,開口量は18mmであり,口腔内に印象用トレーを挿入することが困難であった。義歯の製作にあたり, 開口量の改善が必要であると判断し, 当院摂食機能療法科と連携し, 口腔機能リハビリテーションを実施し, 開口量の増大を図ったうえで,義歯の製作を行った。なお本症例の発表に対し,患者より同意は得ている。
【経過】
 リハビリテーションの内容は,手指・インリップス・電動歯ブラシによる口腔周囲・口唇・左右頬粘膜のマッサージとストレッチ,ガーゼによる舌の牽引訓練,舌圧子による抵抗訓練を行った。その後,開口器による開口訓練を実施した。可能な範囲で,自宅でのリハビリテーションの実施も指示した。開口量は2カ月後に25mmまで回復し,口腔内に印象用トレーの挿入が可能になったので,この時点で上下新義歯の製作に移行した。新義歯装着後に数回義歯調整を行い,疼痛が消失したため治療終了とした。咀嚼機能は122mg/dlに改善し,現在は定期的に義歯の調整,開口量の維持・増大のための口腔リハビリテーションを実施している。現在の体重は42kgに増加し,BMIは19.2に改善された。
【考察】
 本症例では40mm程度まで開口量を改善することはできなかった。これは,口腔癌の手術後から長時間が経過していたためと推察される。しかし開口量が改善することで義歯の製作を可能にしたことより,口腔機能リハビリテーションによって,本症例が良好な結果を認めたと考察する。さらに開口量の増大により,咀嚼運動がスムーズになり,十分な咀嚼機能の回復に繋がっていると考察する。(倫理審査対象外,COI開示:なし)