一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター5

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター5 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-27] 顎下腺摘出患者に対し口腔機能訓練を行い口腔機能に改善が認められた症例

○原田 佳枝、西 恭宏 (鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 口腔顎顔面補綴学分野)

【緒言】
口腔機能低下症は、本来は加齢による口腔機能低下による疾患であるが,比較的若齢でも早期から多数歯を喪失し口腔機能が衰え老化が早まることが考えられる。今回は,多数歯欠損に対し長期間義歯を装着せず放置した患者が顎下腺摘出後に義歯製作を行ったところ,口腔乾燥による違和感を訴えたため口腔機能検査結果に基いた訓練を行った結果,症状改善が認められたので報告する。

【症例】
59歳,男性。下の歯茎が腫れて噛めないことを主訴に来院した。現症:上顎無歯顎,下顎前歯・左下4残根以外欠損。既往歴:歯科受診は20年くらい前から途絶えており,義歯装着歴はなし。現病歴:冠攣縮性狭心症,高血圧症(服薬あり)。診断:下顎3-4根尖性歯周炎,右顎下腺唾石症。なお本報告の発表については,患者から文書による同意を得ている。

【経過】
下顎残根の抜歯ならびに右顎下腺摘出術を行い,新義歯を製作した。義歯治療後には咀嚼機能(グルコセンサー)は 190mg/dLを示し回復したが,患者は口腔乾燥による違和感を訴えるようになった。指導開始前の舌苔付着度は66%,ムーカスは18.8,唾液量(サクソンテスト)1.2g/2分,舌圧も29.3kPaであることから口腔機能低下症と診断し,訓練を開始した。訓練開始後,舌圧は低下したものの,舌苔付着度は38.9→11.1,ムーカス27.2→30.4と改善が認められた。

【考察】
本症例は初診時59歳と一般的な口腔機能低下症患者よりも若齢ではあったが,唾液腺摘出による器質的な変化による機能障害だけでなく,これまで一度も義歯装着経験が無いことから,口腔機能が低下している可能性があると考えた。検査の結果,口腔機能低下症と診断され,舌清掃指導や機能訓練を行った。訓練開始後は,主訴である口腔乾燥については熱心に指導内容を順守する傾向もあったためか,舌苔付着度や唾液分泌に関しては改善が認められた。今後も定期的な検査を実施して口腔機能,特に唾液分泌について管理していく必要がある。

(COI開示:なし,倫理審査対象外)