The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター5

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター5 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-30] 口腔内出血を契機に特発性血小板減少性紫斑病と診断された高齢者の一例

○小松 万純1、片倉 朗2 (1. 東京歯科大学 オーラルメディシン・病院歯科学講座、2. 東京歯科大学 口腔病態外科学講座)

【緒言】
 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は明らかな原因や基礎疾患がないにも関わらず,血小板の破壊が亢進し,血小板数が減少する後天性疾患である。また,高齢者にも突然発症する疾患である。今回,高齢者において口腔内出血がITPの診断の契機となり,口腔機能管理を行った一例を経験したので報告する。
【症例】
 88歳,女性。口腔内の出血を主訴に来院した。【既往歴】心筋梗塞,糖尿病があり,バイアスピリンを内服していた。【現病歴】当科受診前日より両側頬粘膜からの出血を自覚し,かかりつけ歯科を受診。精査加療目的に紹介受診となった。初診時の口腔内に舌背部や両側頬粘膜に血腫を認め,両側上肢・下肢にも点状紫斑が認められた。歯の動揺はなかった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
 初診時,全身性の出血性素因を疑って,血液検査を行ったところ血小板数が0/μLで,ITPの疑いで当院血液内科に対診し即日入院となった。入院当日・第2病日に濃厚血小板10単位の輸血を行った。第7病日に骨髄穿刺を行い,ITPと診断され,プレドニン・ビスフォスフォネートの投与を開始した。当科では口腔内出血への対応を行うとともに,易出血性に配慮して軟毛ブラシによる口腔清掃指導を行うなど,口腔衛生管理を実施した。第12病日に再度血小板の減少を認め,レボレードの内服を開始した。第27病日に血小板数が2.9×104/μLに上昇し,口腔内出血も認めず,第29病日に退院した。退院後は血液内科と併診し経過観察を行っているが,転倒予防が重要課題であり,サルコペニアやフレイルの予防の観点からも口腔管理を継続している。
【考察】
 高齢者は様々な併存疾患やその治療薬から出血傾向を示すことが多い。本症例においては,臨床所見から出血性素因を疑い血液検査を実施し,迅速に血液内科に対診を行うことができた。高齢者のITP患者は増加傾向を示しており,原因不明の口腔内出血の際は鑑別診断にITPも考慮する必要がある。本症例は出血傾向に加えステロイドやビスフォスフォネートが開始され, 口腔衛生管理により歯周病の重症化とMRONJを予防することも必要となった。また,ITP患者にとって転倒は致命的になるため,サルコペニアやフレイル予防の観点からも口腔機能維持の必要性を説明し,口腔機能管理を行った。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)