The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター5

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター5 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-29] 高齢患者の歯性上顎洞炎に対して歯周炎との鑑別が困難だった症例

○玉井 恵子、内藤 徹 (福岡歯科大学総合歯科学講座高齢者歯科学分野)

【緒言】
 副鼻腔炎は、鼻汁、鼻閉、悪臭、頬部痛等が主な臨床症状であるが、歯痛に類似した訴えがあることも多い。 ときに歯性疾患との鑑別が困難で、早期に適切な処置がとられない症例も散見される。今回、感染リスクの高い高齢の複数の疾患を有する患者に対して、適切に診断を行った上で関連医科との連携をとり、対応できた症例を報告する。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【症例】
 86 歳の女性。2019年 5月に左側上顎歯肉の腫脹と疼痛を主訴に当科初診となった。既往歴は 2型糖尿病、高血圧症、乳癌術後、リウマチ、メニエール病であった。主訴に相当する└7 の遠心側歯肉に瘻孔を認めた。
【経過】
 初診時に└7 に8㎜の歯周ポケットと瘻孔形成を認めた。デンタルエックス線では└7 は生活歯と判断されたため、歯周炎の急性症状と判断し、ポケット内洗浄と抗菌薬の処方を行った。一時的に症状は 改善したが、2か月後に再燃した。その後「黄色の鼻汁が出るようになった」との訴えが出現したため、 同年 9月、当院耳鼻科に紹介したところ、Computed Tomography(CT)で左側上顎洞の陰影と └7 の 上顎洞への交通を認め、左側歯性上顎洞炎と診断された。└7 は切削診にて歯髄失活を確認の後、感染根管処置を繰り返すも、明らかな改善は得られなかったため抜歯を行った。なお、抜歯に際しては、ビスホスホネート製剤を服用していたため、整形外科にも対診を行った。抜歯から2か月後、CTでは上顎洞粘膜の肥厚はみられたが症状の改善を認めたため、耳鼻科終診となった。抜歯部位については可撤性義歯による補綴治療を計画していたが、通院困難で義歯作製の希望もなかったため、2021 年 2月に終診となった。
【考察】
 本症例は高齢患者の急性疼痛について、歯周炎と歯性上顎洞炎との鑑別が困難な症例であった。デンタルエックス線所見や口腔内所見だけにとらわれず、症状の経過や特徴を詳細に聴き取ることで、最終的に耳鼻科との連携に繋げることができた。歯性上顎洞炎と診断された後は、全身への負担を考慮して 保存的処置を試みるも、 最終的には保存困難となった。しかし、関連他科と適切に連携をとる事で、無事に良好な転帰を得ることができた。今後も高齢者の診察に際しては、可能な限り全身への負担が少なくなるような早期診断や治療を心がけたい。 (COI 開示:なし)(倫理審査対象外)