一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター6

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター6 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-33] 左被殻出血後遺症の患者の嚥下機能評価を行い、退院時にリハビリ継続のため地域医療連携を行った症例

○宮原 琴美1,2、戸原 玄3 (1. 医療法人社団相明会 岩本歯科医院、2. 一般社団法人巨樹の会 原宿リハビリテーション病院、3. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
脳血管疾患は経過とともに病態・療養環境も変化する。今回被殻出血後遺症の患者に対し嚥下機能評価を行い、 退院時に訪問先クリニックへ情報提供を行うことで退院後のリハビリへつなげた一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
患者は77歳男性。X年12月に左被殻出血のため入院しX+1年1月に当院のKリハビリテーション病院に転院した。 ミキサー食を3食経口摂取していたが、同年2月に38℃の熱発があり1週間ほど禁食・点滴投与した。その後経口摂取を再開し、むせが頻回に認められたため同年2月に当院へ嚥下機能検査の依頼があった。
初診時は安静時も湿性嗄声が認められ、口腔内は乾燥し清掃状態もやや不良であった。普通型車椅子で2時間程度の座位保持が可能で、問いかけに対する理解や発語も可能であった。嚥下内視鏡検査の結果ミキサー食で嚥下反射惹起遅延を認め、嚥下後に著明な咽頭残留がみられた。主治医やSTと協議し、経鼻胃管にしたうえで咽頭収縮力や喀出力の改善を目的とした直接訓練、間接訓練を計画し週2回の口腔ケアを歯科衛生士に指示した。 その後の再評価で咽頭収縮力の改善を認めたが、経口摂取開始までには至らずX+1年4月に胃瘻を造設した。同年8月に中間のとろみ水を誤嚥なく摂取可能となり、湿性嗄声も改善し咽頭残留も殆ど無くなった。なお本報告の発表について代諾者からの同意を得ている。
【結果と考察】
本人の希望である経口摂取再開には至らなかったが退院時は初診時より嚥下機能の向上が認められ、お楽しみ程度の経口摂取が可能となった。Alb値は初診時2.3g/dLから3.8g/dLに、BMIは初診時19.0で一時18.1まで低下、 退院時に18.4まで回復した。また当院MSWと訪問先クリニックMSWの間で事前にカンファレンスする機会を設定し、退院後に訪問歯科診療による摂食嚥下リハビリテーションを実施するための患者情報の伝達、嚥下訓練の引き継ぎを行ったうえでX+1年8月に自宅退院となった。退院後環境が変化してもできる限り入院中の経過を活かせるように準備を整えることは、リハビリ病院に勤務する歯科医師の重要な役割の一つと考える。特に今回のような重い嚥下障害患者においては、退院時の十分かつ確実な情報提供がリハビリの迅速な再開に重要であり、誤嚥性肺炎発症・再入院のリスクを軽減できると考えられる。
COI開示:なし
倫理審査対象外