The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター6

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター6 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-34] 被殻出血後,歯科治療と摂食嚥下リハビリテーションの介入により,食形態の向上及び生活基盤が整った症例

○小谷 朋子、戸原 玄 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
 急性期・回復期を経て生活期へと移行した患者においても,リハビリテーション介入が必要となる症例を多く経験する。今回,歯科介入と同時に,姿勢の崩れに対するリハビリテーションを実施し,食形態の向上及び生活基盤が整った症例に関して報告する。
【症例の概要と処置】
 患者は68歳男性,20XX 年4月右被殻出血を発症し,その後開頭血腫術,気管切開術を受けた。同年5月末に回復期病院へ転院し,気管カニューレの抜去,胃瘻造設術を受けた。20XX +1年4月8日,有料老人施設へ入所後, 口腔管理目的で施設より紹介を受け,介入を開始した。
 初診時,左片麻痺を認め,体幹は左へ傾斜,頭部は前屈状態であり,発語はほぼ認めなかった。口腔内は,動揺歯や残根を多く認め,咬合支持はなかった。既往歴としては症候性てんかんがあった。嚥下内視鏡検査より, 左喉頭蓋谷・梨状窩への咽頭残留を認め,とろみ水は嚥下反射惹起遅延のため誤嚥し(DSS=3),脳出血後の姿勢の崩れによる影響を感じられた。
以上より,まず保存不可歯を抜歯し上下義歯新製,そして姿勢調整のためのリハビリテーションを進め,義歯セット後に食形態を再検討する計画とした。
 なお,本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【結果と考察】
 4月8日より抜歯術を進め,義歯新製を進めた。リハビリテーションも開始し,腹筋・広背筋等の伸長,及び右上肢の伸長・舌骨上筋群強化・頭部位置コントロールを目的として,それぞれリハビリテーションメニューを考え,スタッフのマンパワーを考慮し指導した。すると徐々に体幹の左傾斜・頸部前屈位の改善を認め,更に会話が増加,発話も明瞭となった。
9月30日に上下部分床義歯を装着し,嚥下内視鏡検査を実施した。咀嚼状態良好で,全粥・常食で咽頭残留や誤嚥は認められなかった。少量の液体では誤嚥を認めなかった(DSS=5)が,自身で量のコントロールが難しく,食事に際してはムセやすいため,とろみ付与は継続とした。
 今回の症例では,口腔管理と共に,全身的なリハビリテーションを取り入れたことにより,義歯を使用できる姿勢が整った。また施設スタッフと患者とのコミュニケーションとしても役立ったように思われる。リハビリテーションの専門職がいなかったが,看護師・介護士・歯科医師・歯科衛生士等で連携し,広く患者の生活の質に寄与できた。(COI開示:なし 倫理審査対象外)