The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター6

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター6 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-36] 高血圧症を有する患者に対し抜歯を行い、義歯修理により早期の機能回復を図った症例

○中嶋 千惠1,2,3、小向井 英記1 (1. 小向井歯科クリニック、2. 奈良県立医科大学口腔外科学講座、3. 長尾歯科医院)

【緒言】
本邦の高血圧患者数は約4300万人と推定され加齢とともに罹患者は増加する。そのため高血圧症は高齢者の歯科診療で最も多く遭遇する合併疾患と言える。今回われわれは、咀嚼障害を主訴に来院した高血圧症を有する高齢者に対し、抜歯および義歯修理を同日に行うことで咀嚼障害からの早期回復を図った一例を経験したので報告する。
【症例】
75歳女性。既往、高血圧症。咀嚼障害を主訴に2021年10月8日初診となった。鉤歯である左上3が脱離し、もう一つの鉤歯である右上2は動揺していた。上顎義歯は安定せず多数歯が抜歯適応であった。なお本報告の発表は患者本人から文書による同意を得ている。
【経過】
10月8日に問診から高血圧症で現在内科に通院中であること、その他合併症はなく服用薬はリシノプリル1剤であることを確認した。動揺の強い右上1、左上1、2を抜歯のうえ旧義歯を修理し総義歯とすることが義歯の機能不全の改善に有効と考え、患者に説明し同意を得た。10月19日に局所麻酔下で右上1、左上1、2を抜歯した。使用した麻酔薬は1%リドカイン塩酸塩(1/8万Ad含有)計1.8mlで、血圧は来院時119/64mmHg、 麻酔後125/78 mmHg、術後125/70mmHgと大きな変動なく推移した。術中術後に特記事項なく、即日に義歯を総義歯に修理した。11月5日に局所麻酔下で左上3、4を抜歯した。血圧は術前138/75mmHg 、麻酔後142/56mmHg 、術後120/68mmHg であった。11月26日より義歯作製を開始し、12月28日に上顎総義歯、下顎部分床義歯を装着した。
【考察】
歯科治療時の循環を変動させる要因は、緊張や不安等による精神的ストレスと局所麻酔および歯科処置による痛みによる肉体的ストレスが大きな割合を占めるとされる。問診と十分な説明を行い治療に対するストレスの軽減を図り、麻酔前はあらかじめ刺入点に表面麻酔を塗布し無痛麻酔を心掛けた。抜歯前の血圧は、10月19日は正常で11月5日は高値血圧であった。今回は相当しなかったが、収縮期血圧が140~149㎜HgのⅠ度高血圧であっても他の循環疾患を合併する場合は処置中に生体監視モニターによる監視が推奨されている。高齢者では血圧の動揺性が大きく変動しやすいことを念頭におき対応することが重要と考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)