The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

Fri. Jun 10, 2022 5:00 PM - 6:00 PM 摂食P2 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[摂食審査P-06] 下顎歯肉がん術後の経管栄養患者が経口摂取へと移行した1例

○伊原 良明 (昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔リハビリテーション医学部門)

【目的】
 頭頸部がんの治療法は外科療法、化学放射線療法のいずれも近年飛躍的に進歩しているが、治療法の進歩にもかかわらず、治療後の機能障害により経口摂取困難となり経管栄養にて退院となる場合も少なくない。今回われわれは、下顎歯肉がんの治療後胃瘻による栄養管理であった患者に対して、口腔外科医、口腔リハビリテーション担当医、言語聴覚士の医療連携により胃瘻での栄養管理から全量経口摂取可能となった症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 77歳、女性。右側下顎歯肉癌(T1N3b)の診断にて右側下顎骨辺縁切除術、右側全頸部郭清術、左側肩甲舌骨筋上頸部郭清術、放射線治療(66Gy)を施行された。治療後嚥下困難と診断され栄養管理は胃瘻であった。摂食嚥下訓練を主訴として当科紹介受診となった。上下顎無歯顎で、初診時評価にて発声障害、構音障害、舌圧の低下(23.0kPa)、口唇閉鎖機能不全を認め、RSSTは1回であった。嚥下造影検査では左傾斜右回旋姿勢にてヨーグルト状食品、水分(トロミなし)で送り込み障害は認めるが誤嚥、喉頭侵入は認めず、咽頭残留量もごく少量であった。以上より、左傾斜右回旋姿勢での直接訓練、言語聴覚士による発声訓練および構音訓練、上顎義歯と一体化したPAPの作製を立案した。
【結果と考察】
 直接訓練開始2週間後ゼリー1個の摂取が10分程度で可能となり、その後PAPを装着し、直接訓練を継続した。患者本人が食形態の向上を望み、ペーストおよびムース状食品にアップした。その結果、口腔内残留量の増加を認めたものの、ゼリーとの交互嚥下で残留物の消失をえられ、さらに、栄養摂取時間の短縮も得られた。下顎義歯の作製は下顎辺縁切除後のため口腔外科医は慎重であり、PAPと残存舌で押しつぶし可能な硬さの食品による咀嚼訓練を開始した。訓練開始後押しつぶしに時間を要するものの、キザミ食の摂取が可能となったため、 口腔外科医との相談のもと、昼食時の胃瘻を中止し、昼食の全量経口摂取を開始した。食事時間は1時間程度にて摂取可能であった。その後、患者より朝夕食に関しても経口摂取でとの希望があり、経口摂取量の増加を進め、 3食全量の経口摂取が可能となった。現在まで発熱など肺炎を疑う所見は認めず、体重は初診時より4キロ増加し、安定している。なお本発表は患者より同意を得ている。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)