一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-04] 義歯不良と飲み込み困難を訴え来院した患者に対する摂食嚥下リハビリテーションの1例

○小野 圭昭 (大阪歯科大学障がい者歯科)

【目的】
摂食嚥下障害は,さまざまな原因疾患により発症するが,原因疾患が特定できず加齢因子が加わり,食事困難をきたす症例もある。今回は,義歯の維持不良を訴え,徐々に飲み込みが困難になってきたと訴えた患者に対し摂食嚥下リハビリテーションをおこなった症例を報告する。
【症例の概要と処置】
83歳女性。義歯の調子が悪く,咀嚼できず飲み込みが悪いことを主訴として来院した。高血圧,糖尿病,不安神経症の既往が有る。認知症検査を受け,MCIと診断を受け,認知症高齢者の日常生活自立度はⅡaである。両下肢の筋力低下はあるが自立歩行可能で,自炊し1人で暮らしている。日常生活自立度はJ2である。
診査の結果,全身の動きがぎこちなく,不随運動,眼振により何らかの神経疾患が疑われた。体重が減少し,栄養不良気味である。安静時呼吸において息切れ,胸式・努力呼吸が見られた。上顎義歯は,床縁が短く,前歯部突き上げにより維持不良であった。オーラルディスキネジアがみられ,舌はしわが多く弾力が少なく萎縮していた。摂食嚥下機能検査の結果,咀嚼から嚥下の移行は不良であった。嚥下内視鏡検査の結果,舌の送り込み不良, 食塊形成不全がみられ,嚥下反射のタイミングが悪かった。喉頭侵入,誤嚥は認められないものの嚥下困難感や疲労感は顕著であった。
治療手順は,舌運動を阻害しないよう新義歯を新製し,予後を見据えて食事形態の工夫と栄養サポートを行う。 まず介護用レトルト食品等を活用し,食塊形成しやすいものへ食形態の変更を,飲み物には薄いとろみをつけるよう指示した。デイサービスでは嚥下調整食の提供がないため栄養剤等の持参を指導した。
旧義歯を修正し維持改善を行うとともに,上顎義歯を舌接触補助床として改修した。新義歯作製にあたり,ピエゾグラフィを用いて人工歯配列位置を決定し,上顎義歯の口蓋研磨面を舌接触補助床として作製した。
なお 本報告の発表について患本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
食形態の変更と新義歯作製により,舌の送り込みが幾分スムーズになり咀嚼から嚥下への移行が改善し,食塊がばらつかなくなった。本症例は医科に対診を取っても原因疾患が特定できず,重度の嚥下障害がないものの,摂食嚥下機能を診査し義歯作製と摂食嚥下リハビリテーションをおこなった結果,誤嚥リスクを軽減することができたと考える。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)