The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター » 摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

[摂食更新P-11] 繰返す誤嚥性肺炎の軽度フレイル高齢者に対して摂食支援によって再入院を予防しえた一症例

○目黒 道生 (鳥取医療生協・せいきょう歯科クリニック)

【目的】
 近年,地域包括ケアシステムが推進され地域における連携が必要とされている。この連携には垂直的統合と水平的統合,linkageとco-ordination,そして臨床的統合等の3種類の統合ケアの概念がある。垂直的統合では急性期病院の退院前カンファレンスへの参加,水平的統合では各介護事業所との連携や担当者会議への参加,また, 医療機関だけでなく介護事業所等からの個別紹介から始まり(linkage),事業所間の紹介や公的制度を活用したシステム的な紹介へ発展させること(coordination),さらに各事業所と臨床情報の共有や共通化(臨床的統合)等が連携として挙げられる。これらの概念を取入れ,摂食支援を重視し独立した部門として訪問歯科診療を7月より開始した。この度,誤嚥性肺炎を繰返す自立高齢者に対して急性期病院退院前に紹介を受け,介護事業所,かかりつけ内科と連携し,繰返す誤嚥性肺炎を予防し在宅での安定した療養を確立した症例を紹介する。
【症例の概要と処置】
 83歳,男性。脳血管疾患や認知症の既往なくADLは自立。9月に誤嚥性肺炎にて急性期病院に入院した。抗菌療法等で軽快し自宅に退院したが7日後に発熱があり,誤嚥性肺炎の診断で再度入院した。入院中の嚥下内視鏡検査(VE)で喉頭侵入や食塊残留を認め,退院直前の11月に誤嚥性肺炎の予防を目的に入院主治医より,訪問歯科の依頼を受けた。
 退院前カンファレンスに参加し誤嚥予防の指導内容を引継ぎ,退院日の夕方に初回の訪問歯科診療と担当者会議が開催された。食事中の誤嚥よりも臥床時の不顕性誤嚥を疑い,嚥下内視鏡検査によって臥床時や姿勢変化時の水分誤嚥を評価した。
 本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 VE結果から,夜間の不顕性誤嚥と姿勢の変化の際の残留水分の誤嚥が,繰返す誤嚥性肺炎の要因と診断した。 そこで,食事形態や水分粘度,口腔衛生管理の指導を本人と家族に行い,机,椅子や寝台の変更等の提案をした。2 カ月後に食形態やCRP値が改善し,入院を経ずに在宅で生活している。
 本症例では急性期病院退院時に訪問診療へ移行したことにより,各事業所との連携が速やかに進み,一貫性のある指導内容を徹底できた。これらのことが,誤嚥を予防でき,栄養状態や食事形態の向上に繋がったと考えられる。
(倫理審査対象外,COI開示:なし)