[O6-02] 近赤外蛍光検査システムを応用した新しい嚥下機能評価に関する研究
【目的】
近赤外蛍光システムは近赤外線光を用いて緑色蛍光色素(ICG:インドシアニングリーン)の蛍光を計測する装置である。本システムを応用し,嚥下後の咽頭残留の有無や食塊の咽頭通過の有無を非侵襲的に評価できる可能性がある。本研究では嚥下障害患者を対象として,食品中に混和したICGの蛍光強度を測定し,嚥下造影 (VF) と対応させシステムの有用性を検討した。
【方法】
対象者は当分野外来を受診する嚥下障害患者5名で,文書で研究参加の同意を得た。試料はICG濃度1.6μM, 40w/v%硫酸バリウム含有牛乳に中間のとろみを付与した。ICGの蛍光強度を検出する光プローブを患者の左右いずれかの頚部側面皮膚上から梨状窩の位置に垂直に当て,VFで位置を確認した。装置の励起光強度は20mWに設定し,計測開始前に基線となるバックグラウンド蛍光を測定した。蛍光強度測定と同時にVFを実施し,まず蛍光積算時間1.0秒で嚥下後に梨状窩に残留した試料の蛍光強度を,次に蛍光強度積算時間0.15秒で試料が咽頭を通過する際の蛍光強度を測定した。試料は1.5ccまたは3ccを摂取させ,VF画像上の嚥下動態と蛍光強度の計測結果を対応させた。
【結果と考察】
VFで梨状窩に残留が確認された4名で蛍光強度が基線より上昇した。上昇値の最小値は200k,最大値は300kであった。また試料の咽頭通過時には,4名でVF上の通過のタイミングと同時に蛍光強度が基線より上昇した。最小値は25k,最大値は150kであった。一方,蛍光強度の波形を解析した結果,頚部皮膚表面から梨状窩までの距離や嚥下時の喉頭挙上が蛍光強度の変化に影響する可能性が示唆された。
研究結果より,本システムは蛍光強度積算時間を調整することで食塊の通過や梨状窩残留を確認でき,非侵襲的な嚥下動態の観察に有用なツールとして応用できると考える。今後は頚部の厚みと蛍光強度の関連を検討するとともに,測定感度および精度の向上を目的として装置を改良し,臨床的に応用可能なシステム開発を目指す予定である。
(COI開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認番号 D2020-008)
近赤外蛍光システムは近赤外線光を用いて緑色蛍光色素(ICG:インドシアニングリーン)の蛍光を計測する装置である。本システムを応用し,嚥下後の咽頭残留の有無や食塊の咽頭通過の有無を非侵襲的に評価できる可能性がある。本研究では嚥下障害患者を対象として,食品中に混和したICGの蛍光強度を測定し,嚥下造影 (VF) と対応させシステムの有用性を検討した。
【方法】
対象者は当分野外来を受診する嚥下障害患者5名で,文書で研究参加の同意を得た。試料はICG濃度1.6μM, 40w/v%硫酸バリウム含有牛乳に中間のとろみを付与した。ICGの蛍光強度を検出する光プローブを患者の左右いずれかの頚部側面皮膚上から梨状窩の位置に垂直に当て,VFで位置を確認した。装置の励起光強度は20mWに設定し,計測開始前に基線となるバックグラウンド蛍光を測定した。蛍光強度測定と同時にVFを実施し,まず蛍光積算時間1.0秒で嚥下後に梨状窩に残留した試料の蛍光強度を,次に蛍光強度積算時間0.15秒で試料が咽頭を通過する際の蛍光強度を測定した。試料は1.5ccまたは3ccを摂取させ,VF画像上の嚥下動態と蛍光強度の計測結果を対応させた。
【結果と考察】
VFで梨状窩に残留が確認された4名で蛍光強度が基線より上昇した。上昇値の最小値は200k,最大値は300kであった。また試料の咽頭通過時には,4名でVF上の通過のタイミングと同時に蛍光強度が基線より上昇した。最小値は25k,最大値は150kであった。一方,蛍光強度の波形を解析した結果,頚部皮膚表面から梨状窩までの距離や嚥下時の喉頭挙上が蛍光強度の変化に影響する可能性が示唆された。
研究結果より,本システムは蛍光強度積算時間を調整することで食塊の通過や梨状窩残留を確認でき,非侵襲的な嚥下動態の観察に有用なツールとして応用できると考える。今後は頚部の厚みと蛍光強度の関連を検討するとともに,測定感度および精度の向上を目的として装置を改良し,臨床的に応用可能なシステム開発を目指す予定である。
(COI開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認番号 D2020-008)